凹凸の摩擦 (凸凹)
女になったばかりだからか、またはそこが使われたことがないからか、元が色白だからかわからないけれど、閉ざされた陰唇が妙に綺麗な色をしている。
よく見ようとゾロはさらに顔を近づけ、濡れているという箇所を見つけるとそこに指を入れてみた。
「おいっ!勝手なことすんな!まだ初々しくも神聖なる処女だってのに!」
手の動きが止まった。
そうだった。初々しいか神聖かはわからないけれど、自分もこいつもルフィもウソップもフランキーもおそらくチョッパーさえも皆出来たての処女なのは確かだ。
ゾロは指を抜いて上へと滑らせると、肉の間から小さな突起のようなものを探し出した。
ピクッとサンジの身体が震える。
「…なに?」
指先でそこを集中的に揉むと「…や、やや、ちょ、ちょっと…」抵抗するのを無視してさらに擦っているとだんだん腰が引けてきて、最後には露骨に嫌がって逃げようとした。
「なんで逃げる?」
「……なんでって、……小さいみかんは味が濃くて敏感で…なんか…すごく駄目っぽい…」
訊けば意味がわからないことをいう。
ゾロは首を傾げ、そして男だった時よりもさらに細くなった脚を持ち上げ、腰を浮かすようにしてそこを舐めると嫌がって暴れた。
「…だ、だ、だからそこはやめろって!」
「だから何でだ?ちんこ舐められるのと同じだろ。処女かもしれんがされるのは初めてじゃあるまいし」
問題ないだろうとまた舐めると、
「それが…なんか違くて……、あ…やめっ」
身を捩った。
その陰核は小さく、上半分が包皮に被われて、指でクリッと剥くように出して根元から強く吸えば、サンジが小さな叫び声をあげた。
「……っ、マジで勘弁…、女の体は慣れねぇというか…、自分のものじゃないような…」
少し涙目だ。
「俺のを舐めてもいいぞ」
「てめぇの?いやー、どうだろ、嬉しいような、嬉しくねぇような」
あやふやに首を傾げるのを無視して、また舌や唇で弄んでいると、それが少し膨らんできたような気がする。さっきは強く吸ったのでもしかすると痛かったのだろう、ゾロは思った。丁寧に舐めればやっぱり感じるのか、ふにゃっとした顔で眉がますます下がってきた。
ぐるぐる巻いた眉はふにゃふにゃで、頬はピンクを通り越して鮮やかな薔薇色、とうもろこしのような金髪はくしゃくしゃに乱れ、垂れ目の女の子が色っぽい目で、ただ自分を睨んでいるようにしか見えない。
ゾロはますます変な気分になった。
自分はいったい誰となにをやっているのか、一瞬分からなくなった。コックはコックのようでコックじゃないのにでもコックで、かくゆう自分も女の体だ。大きな胸に細くなってしまった腕やくびれた腰、そんな二人では客観的にはただレズってるようにしか見えないはずだ。それはそれで構わないのだが、この先どうすればよいか、あまり良くわからない。この先どころか、いろいろ見失っているような気がする。
少し考え、ゾロはサンジを跨いだ。シックスナインの体位だ。
閉じ気味の陰唇を左右に大きく広げ、ぽつっと小さく飛び出たものを舌と唇で愛撫した。歯で軽く噛むと「…あっ、ああ、や、っ…」嫌がって身を捩り、また吸って舌先で転がしていると四肢を強張らせ、体液とも唾液ともつかないものが溢れ、それは奥のアヌスまで濡らした。
ちゅっちゅと啄ばむような愛撫をしていると、ゾロは自分の尻になにやら気配を感じた。
そっと触れてくる小さな手、温かい息と共にサンジの顔が近づいてくる。
もとから負けず嫌いな男が、自分だけやられっぱなしでいられるわけがない。しかも目の前に女のアレがあれば、それがたとえ自分のでなくてもコックは吸いついてくるだろう。
予定通りの展開にゾロの口端が上がった。
舌先で軽く舐めて、キスするように口に含むと「…ん?な…んだ?」いきなり困ったような声をあげ、「あ、ちょ、てめ、よくも騙しやがっ…」口の中でいきなりそれが大きく膨れ上って、サンジが小さな悲鳴をあげた。
「…戻った」
腕に、腹に、体の底から力が溢れてくる。グッと拳を握れば漲る力と筋肉の躍動、そして「…なんでてめぇだけ。俺は遅かったからもう少し後か」少し不貞腐れたようなサンジを見てゾロは高笑いしたくなった。
が、それを噛み殺し、口端で笑う。今の気分をひとことでいうならば、天下を取ったようである。
「物騒なツラで笑うな気色悪ぃ」
「ほっとけ」
そういって、いきなりサンジの細い足首を掴むと、片方だけ上へ高く持ち上げた。
おもわず小さな悲鳴をあげるサンジに、
「俺は」
低い声でゆっくりと話しかけた。
「今回のことでわかったことがある。おめぇが男でも女でもどっちでもかまねぇってことだ。男だからとか女だからなんてことはあまり関係ねぇんだってな。もっともこうなったからわかったんであって、そもそも一時的なものだしすぐに戻っちまうが、ようするに、だからってわけじゃねぇが、楽しむなら今のうちだ」
「はァ?」サンジが露骨に眉を顰めた。
「なんか尤もらしい言葉でまとめようとしてねぇか?馬鹿のくせに頭なんか使いやがって。ようするにやりてぇってことだろうが。ふざけんな。処女なのにてめぇなんざとやるわけがねぇ馬鹿か」
外見も声も全然違うが、この憎々しい口調はいつものコックそのものだ。しかも鋭い。
ゾロはこめかみをピクッとさせ、
「俺が怖いからか?」
出来るだけゆっくりとした口調で話しかけた。
「たしかに俺は優しい扱いなんかできねぇ、男の時ならともかくお前も女じゃ負担も大きいはずだ。だけど少し我慢すれば女のセックスはかなり気持ちいいと聞いたが」
そんな誘いに、「…だから負担がどうのじゃなく」サンジが面倒そうに舌打ちした。なんでケツのみならず、女としての処女までお前にくれてやらねばならんだ、もったいない、と、サンジの言いたいのはそこだ。
「そんなにしたけりゃ強姦でも何でもすりゃいいだろ。俺はまだ女の体だし、てめぇは男に戻ったから力の差なんか歴然だ。そんなことよりもう足首掴むのはよせ。放せ」
実に小憎らしい顔で言葉を吐き捨てた。
あんなことをいっているけどもちろん承諾しているはずもなく、ただの嫌味でしかなくて、そんな諸々がゾロはだんだん面倒になってきた。
「強姦されてぇなら話しは別だが、お前、処女だから男が怖いだけだろ」
するとサンジがむきになって怒鳴った。
「しつけぇ!男が怖いとかわけがわかんねぇこと抜かすな!ただせっかく女になったことだし、てめぇも女だしだから女の子同士いちゃいちゃしてみてーなーとか、ぱふぱふくりくりと女の子と乳繰り合いたてーなーとかさ、男が夢を持って何が悪い?女同士でおもいっきりいちゃいちゃはしてぇが、だからと具体的なナニをしようとか考えていたわけじゃ…」
我慢しながら途中までは聞いていたものの、面倒臭さが頂点に達したか、どこかで何かがブチっと切れる音がして、ゾロはサンジの口を手で覆った。
「おい、もっと小さい声で喋れ。女の声は甲高い。いくら見張り台とはいえ他の奴に聞かれたらてめぇが困るだろ」
なにをいまさら、しかも俺が困るのか?と、喉元まで出かかったサンジの突っ込みとその口を、今度は自分の唇ですっぽりと塞いだ。
口が小さい。
重なった唇に絡まる舌、全てがいつもより小さい気がする。
そしてやわらかい。
ピンク色の唇は思ったよりもぷにゅぷにゅしてて、ゾロはまたなんとも形容しがたい不思議な気分がこみ上げてきた。これでいつもの煙草のにおいがしなかったら、自分は誰とこんなことをしてるのかまったくわからないくらいだ。
口を塞がれ、サンジが嫌がって体を離そうとする。頭部を押さえそれを阻止するが、そのいつもの丸い頭ですら男の時より小さい。何から何まで女仕様である。
「…んっ」甘い息が漏れた。
薄目を開けて見てみれば、そこにはコックに似た女がいた。なにを我慢してるのか、顔を赤くしてギュッと目を閉じている。
もう片方の手で乳房とも呼べないものを揉むように愛撫し、柔らかくなった乳首を摘むと身体がビクンと震えた。
指先で揉んだり抓ったりして弄んでいると身を捩って「…う…っ」塞いだ唇から喘ぎが漏れ、舌を強く吸ってまた乳房を弄ぶ。
胸から下へと手をおろし、つるんとした腹を撫で、股間へと手を入れた。
まだ濡れている。
小さな肉芽を探して指で揉むように押してみて、無理やり引っ張ろうとしたら腰がビクッと震え、気づいたらゾロは首の後ろに激しい衝撃を受けた。
延髄を蹴られた。
どういった体勢で、いつ蹴られたかのかすらわからない。どうやら神経が指先にばかりいっていたようだ。気づいたときには壁まで吹っ飛んでいた。
サンジが近寄る。顔は真っ赤で髪はくしゃくしゃ、呼吸は乱れシャツははだけて胸が見え、そんな格好のままゾロを睨んだ。
「…俺が男に戻るまでだ。クソが…、ひとつ貸しだぞ。覚えとけ」
「…っ…」
ゾロが小さく頷く。
阿呆め、借りなんぞ全力で踏み倒してくれる。心で返事して、じんじん痛む首を手で押さえてサンジを自分へと引き寄せた。
床にそのまま仰向けに体を置き、脚を大きく開いて腰を浮かせ、自分のものをあてがい最初は浅く挿入するとサンジが微かに呻き声をあげた。一度動きを止めて、「大丈夫か?」訊くと「…何をいまさら……っ…アホが…」ちょっとだけ涙目でゾロを睨んだ。
一度腰を引き「…っ」、今度は一気に、ずずっと根元まで埋め込む。「……う゛っ………っ」ビクッと上半身を跳ねらせ、体を小刻みに震わせた。
意外と悪くない、ゾロが心で感想を漏らした。
挿入を繰り返しているうちに、狭さときつさがほぐれてきて、だんだん柔らかくなっていくのを感じた。動きが楽になってくる。
そんなゾロの動きに小さくなってしまった身体がゆさゆさ揺れ、脚をさらに大きく裂いて、ぐっと奥まで突くとサンジがまた呻いた。
「っ…てぇ…」
そのぬくもりと、処女ならではの狭さ、締めつけを楽しんでいると、
「…あっ…なァ…まだ終わらねぇのか…?」サンジが訊いてきた。
ゾロが返事をせずにいると、
「いや…、別に…なにが…どうってわけじゃないけど、もうそろそろ…つっ……」
またぎゅうぎゅう締めつける、というか、とにかく狭い。
そして終わるもなにも、まだ始まったばかりである。
なのに「…俺ももうすぐ男に戻るのに、あ…こんなことやってる場合じゃ…、っ、いや、なにがどうというわけじゃねぇけど、でも、もうすぐ終わるよな…?出るか?だけど中だしとかふざけたことしやがったらオロス…外に…、つうか、もういいから出しちまえって…」なんてこといっているところをみると、気持ちよくないのかもしれない。むしろまだ痛みがあるのか顔を苦痛で歪ませている。
ゾロは胸を掌で覆った。
もともと無きに等しい胸は寝ているからますます平らで、一見してどこにも起伏などなく、ただ赤くなったものがぽつんと2つあるだけの、そんな乳房と呼ぶにはあまりにも薄いものを手繰り寄せては揉む。乳首を愛撫する。
「…だから、そこは…」
嫌がって乱暴に払いのけられた手を今度は下へと持っていく。下腹を撫で、ぽやぽやと生えている柔らかな、金髪の陰毛を摘んでは引っ張って、そして陰核があるあたりを親指で押した。
「あっ…」
身体が跳ねる。
さらに弄っているとサンジがゾロの手首を握った。
やめさせようと思ってのことか、だが、いくら引き剥がそうにもどうにも無理だと悟ったか、最後に手首をぎゅっと強く掴んだ。
胸に残された手が悪戯をすると「…や、ああっ…」身を大きく仰け反らせた。
またゾロが腰を動かす。サンジが顔を背けるように横を向き、辛いのか気持ちいいのかわからない声で呻く。
唇から漏れるような微かな喘ぎ声、だがそれは甲高い女の声だ。
ピンク色した濡れた唇、そして赤い頬と甘くせつない喘ぎ声。
「ったく……ヤっておいてなんだが…なんで……こんなことに……」
ゾロの口から、
「…わけがわからん……」
低い呻き声が漏れた。
「…ん、っ」
押し退けるようにゾロの胸に手を置き、
「…あ、…おい、…そろそろ変え…んぞ」
サンジが体位の変更を要求してきた。
それを無視して、膨らんできた陰核を弄ぶように擦る。
「…っ…おい…」
息を荒げ、
「…聞いてるか?」
ゾロは自分が映る潤んだ青い目を見て、
「…だから向きを変え…」
きつい締め付けと、包みこむようなぬくもりを味わっていると、
「…クソったれ…」
キッと睨んで、
「…この野郎………、体位を変えるって、…いってんだろうが…俺の話し聞いてんのかっ!」
怒鳴るないなや、今度はゾロの後頭部を蹴った。
「バックな」サンジがひとりでさっさと向きを変えた。ほら、と、既にゾロに白いお尻を向けている。
「…って…この馬鹿眉毛がァ……、一度ならず二度までも……、蹴るなっ!口でいえ!口で!!」
「うるせぇ!!」
くるっと振り返って、
「……やらしいことばっかしやがって、…上からずっとジロジロジロジロ観察しやがったくせに…」
またゾロを睨み、
「俺の立場になってみやがれ!いいからさっさとしろ!」
また怒鳴った。
心当たりがなくもないわけでなく、しかも相手が女となると蹴られても殴り返すこともできずにゾロは黙った。
悔しさに舌打ちして、背後から挿入しようとゾロが自分のものを握ると、そこに赤いものがついているのが見えた。ぬめりのある体液に、明らかに血が混じっている。
襟足に生えている金色の柔らかな後れ毛、すっかり細くなってしまった白い首に、ゾロは自分の頭を擦り付けた。
「おい?」
後ろからこつんこつんと数回押し付けているとサンジが怪訝そうな声を出した。それに返事をしないで、もう一度うなじに頭を強く押しつけてから、ゾロはゆっくり自分のものをまたサンジの中に埋めていった。
「…っ」
またサンジが呻く。
左手で背後から小さな胸を撫で、ピンと尖ったものを軽く摘むと「あっ」ぶるっと身を震わせ、右手で陰核を指の間に置くとそれを擦った。
「あ、あっ…っ」
サンジの身体が前に崩れ、右手で支えるように腰だけ上に浮かせて背後から突く。
乳首が硬くなると膣がさらに締めつけられることに気づいた。ゾロは腰を動かすのを止めた。硬く張ったものを転がすように押して、同時に、股間に置いた手で体液で濡れた尖りを愛撫した。
「…うっ…っ」呻きながら、白く華奢な肩がぶるぶる震える。
おもいっきり噛みついてみたい衝動を堪え、ゾロはまた腰を動かした。3ヶ所を同時に責め続け、さらに乳首が硬くなると少し強めに指で潰す。
「や、あ、や……っ、んっ…んもう…俺の喘ぎ声…クソ可愛い……」
ぶるっと身体を震わせ、
「てめぇなんかに…聞かせるの…もったいねぇ…」
余裕があるのかないのか、色っぽい声で喘ぐサンジのすっかり濡れた突起を指の間でぎゅっと挟み、付け根から上下に擦ると腰をガクガク揺らして甲高い声をあげた。
接合した部分から、体液が絡まる音がする。挿入されたものを搾るように締めつけてくる。
「…こ…のやろ…」ゾロが低く呻いて、負けてたまるかと勝負を挑むように激しく腰を動かすと、
「――――…っ、や、あ、ああああっ!」
指に挟んだ陰核がぷくっと膨れ、同時に膣が痙攣をおこし「…っ、…ダメだイク、…イ…クッ」体を小刻みに揺らして、そのままの状態でさらに背後から突き続け、すると「あ、あっ!イ…ク…っ…すげ…またイク…!」ガクガクと身体を激しく震わせ、突かれるたびに体液を迸らせ、スパートをかけようとするゾロを一緒に呑み込んでサンジがまた達した。
前に崩れ落ちた体からすぐに自分のものを抜いたが、若干間に合わなかったような気がする。気のせいか、ゾロは考えた。気のせいだったらいい、とも考えた。が、すぐに結論が出た。
アウトだ。ぐったり床に横たわるその股間から、白っぽい液体がとろっと垂れ落ちてきている。
ゾロの眉がピクッと僅かに上がって、さてどうしたものかと目を瞑って考えてるうちにだんだん眠くなってきて、大きなあくびをしてから体液で汚れた床を拭き取り、サンジを肩に担いで風呂へと向かった。
「どうしてかしら?」
ナミが隣にいるウソップを見た。
「どうしてだろうな?」
ウソップがチョッパーを見ると、
「女性ホルモンがまだ体から完全に抜けきらないからだと思う。何故サンジだけホルモンが消えないのかわからないけど、でもそう心配しなくても大丈夫だぞ。時間が経てばホルモンは自然と体外に排出されるはずだから」
チョッパーがそう説明した。
「…じゃ、すぐに男に戻れるんだよな?な?そうだろ?」
サンジが困り顔でぐるぐる眉毛をへにゃっと下げ、白く細い腕で皆にお茶のカップをわたした。朝食後のことである。
その夜、就寝前に「心配すんなよサンジ」上の寝床から顔を覗かせ、ルフィが笑った。
「あ、明日は肉でたのむな。今夜はおでんだったからさ、おでんは旨いが蒟蒻多すぎだぞ。俺ちくわぶは好きだ」
その翌日、夕食時のこと、
「…そっか、まだ戻らねぇのか。でもさ、男のお前が作っても女のお前が作っても、どっちも飯は旨いからな」
頬をパンで膨らませてルフィが笑う。
「…てめぇは飯さえありゃ俺が男でも女でもいいわけだ…?そうだろ?そうなんだよなコンチクショー…!わかった、てめぇはもうおかわりなし!」
「なんでっ!!?どうしてっ!!?褒めただろ、男でも女でも美味いって!?うわあああああああ、冗談だろ!おかわりよこせ!100回よこせ!」
喚き暴れるルフィに脚蹴りをして、「…おかしいなァ?診察してみるかサンジ?」チョッパーの誘いに首を左右に振った。
「ん、まあ、もうちょっと様子みても…どうせもう戻るだろうし…」
「そうか、じゃその気になったら声をかけてくれ。あ、そうだ忘れてた!今日のスイーツ美味かったぞ!あれって全部野菜でできてんだってな?サンジすげぇ!俺、全然気づかなかった!」
嬉しそうな顔のチョッパーの帽子に、ポンポンと軽く2回さわって、妙に力が抜けた声で呟いた。
「…そうか?メインが肉だから少しは野菜を取らなきゃって思ってな、気にいったんならまた作ってやってもいいぞ…」
4日目の午後、朝からずっとなにやらこしらえていたウソップが、出来上がったとそれをサンジに手渡した。
「なんだこの服は?」
「ウェイトレスのおねぇちゃん風に、ナミからもらった古着をリメイクしてみた。おめぇもいつまでもブカブカの男服着てるわけにもいかねぇだろ」
「ナミさん?え、ナミさんの服なのか?」
すぐにその場でシャツを脱ぎ捨て、さっさと着替え始めたのをみて、ウソップが思わず顔をそらした。
「なんだこれ?やけにビラビラしてんな」
その服は黒地で、白のレースがふんだんにあしらわれている。丈はパンツが見えそうなほど短く、でもそのスカートの中もびっしりと白いレースで埋め尽くされているから、どうやらパンツは見えそうにもない。
「ナミさん、こんな服持ってたっけか?あまり趣味じゃねぇような。それにしてもナミさんの服はやっぱいい匂いが、なァ、ウソッ…、プ、って、なんでてめぇは赤い顔してる?」
「……いや、なんでもねぇ、うん、大丈夫だ気にすんな」
正確には、買い間違った服をウソップが譲り受けただけだ。ナミのものには違いないが彼女は一度も袖を通していない。
ウソップはしみじみと頷きながら、
――似合う。想像以上に似合うぞサンジ、いやサンちゃん。日頃でけぇのばっか見てるせいか小振りなおっぱいがこれまた可愛い。だが、俺の前で着替えるのはよせ、自覚がたりねぇ、嬉しいけれど目のやり場に困る。
口に出せないものを心で呟いた。
そこへナミがやってきて、
「…あのね、あの服をどう利用しようとかまわないの、着ない服だし僅かだけどお金は貰ったし。でもそれって、ウェイトレスというより…」
微妙に口篭り、そしてロビンが言葉を繋ぐように「そうね、まるでメイドさんみたい。とても可愛いわ」やわらかく笑った。
その日の夕方、風呂に入ろうとしたゾロはサンジに呼び止められた。
こっちこっちと人気のない方へ誘い、周りをきょろきょろ確認するなり、「ほら」といってメイドさんの服の胸元を大きく開いた。
「な?」
白い胸を曝け出して、サンジがニッと笑う。
「…え?」
ゾロが首を傾げると、
「気づけってバカ。ほら、俺の胸少し大きくなってんだろ?」
妙に得意気な顔をした。
そういわれればそんな気がする。まじまじ見れば、胸が確かに前よりあきらかに膨らんでいるのが見てとれた。
「だから俺の胸には未来があるっていったろ?そしたら、てめぇはそんなのあるかって抜かしやがったよな?どうだ?」
ザマァミロと笑うコックの、自慢の胸に触ろうと手を伸ばせば、その手を思いきり叩いてゾロを睨んだ。
「おさわり厳禁だクソ野郎」
「なんで?誘っておいてもったいぶんなアホ」
「誘うかバカ。実は、俺がまだ男に戻れねぇのはてめぇとやって、ホルモンバランスが崩れてるからじゃねぇかって考えてんだぞ。そんなのチョッパーにも相談できやしねぇ。だから大人しくしてりゃそのうち戻んだろうと思ってんのに、誘うわけがねぇマジでバカな」
バカバカいって便所で抜いてこいと憎まれ口を叩き、さっさと服を閉じるなりムッとした顔のゾロを残し、足早にキッチンへと向かった。
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