彼とシャツと保健室 6






知らずの内に童貞の烙印を押されたゾロであったが、だからといって未経験という訳ではなかった。
年相応かどうかは別にしても、それなりの経験はある。
硬派のように見えても、当たり前だが年頃ゆえ女性に興味がないはずもなく、興味が無いのはむしろ恋愛関係の方だった。人相は悪いが顔自体の造りがそう悪くはないゾロはそれなりにもてる。もてるが本来は無精な性格なのか、特定なお付き合いはしたことがない。
理由は簡単で、面倒だからだ。
話を聞くとか、話を合わせるとか、メールにレスするとか、相手に気を遣うとか、その他もろもろがゾロは面倒で面倒でならない。
しかもそれだけでなく、前にそういう関係になった子に泣くほど嫌がられたことがあった。別にゾロが悪いわけではないが相性が悪かった。具体的にいうと、相手が未経験だった所為もあるだろうが、不幸なことにサイズが合わなかった。
本気で泣かれた。
ゾロはうんざりした。そっちから誘ってきたくせにと、中途半端な状態で断念させられ、いらん我慢を強いられたような気がしてならない。
となると必然的にお相手は年上の女性、ある程度経験値の高い女性が望ましいだろうと考えるのも仕方のない話だ。後腐れもなさそうである。だがそれでもうまくいかないことが多くて、というより女はなにかにつけ面倒で、恋愛そのものに興味の無いゾロは、ますます女性との関係が煩わしく感じてしまう。





ゾロを勝手に童貞扱いしたサンジだが、もちろん年相応に経験はあった。
が、年上の女性相手が多いのはゾロ同様である。
サンジ自身は若くて可愛い女の子が大好きだ。胸が大きければもっと好きだ。でも実際に関係を持つのは何故か年上の女性で、そして同じく恋愛関係には至らない。
原因は明らかだ。はっきりいってサンジは気が多い。オンリーワンを目指す女の子からは早々に手を引かれ、おまけに年上の女性はサンジを可愛がっても本気で相手してくれないというのが現実だ。
たとえば、今現在勤務している高校に於いても、顔とか身体、多少問題はありそうだが性格も一番のお気に入りはナミ先生である。だが、実際そういう関係になってみたいと思うのはロビン先生なのだ。
そこら辺の矛盾にサンジは自覚が無い、というより無頓着だ。あまり気にしていない。
もちろん顔だって悪くない。デレッとした女性向けのだらしない顔や、男向けの人相の悪ささえなければ美形といってもいいだろう。だからそれなりにもてるが、どうやら好いて貰うよりも、自分が相手を好きでいたいと考えるタイプらしい。ある意味、自己中心的な性格といっていいかもしれない。





話はゾロへ戻る。
なにも考えていないように見えるが、そんな彼にも実は悩みがあった。
原因は手元にあるこれだ。『うなじ』やら『首』、『鎖骨』やらの写真、これが悩みの原因だった。
5月の頃に部室で見せられた時は、何でこれが?と大いなる疑問をもったゾロだが、その後再び部室において、ナミやらロビンの写真と共に例の『これ』が若干枚数を増しつつ供給されているのを見つけ、こっそり抜き取ってしまったことがある。
何故そんなことをしてしまったのか。そんな自分に納得がいかなのに、あまつさえ『これ』の正当なというべきか、使用目的を知ってしまった。正確にいうなれば、体験してしまったというべきか。
「何でこれが?」「これ見てどうするのか?」「これを何に使用するのか?」と、疑問を持ったゾロであるが、「これで、何でこうなる?」と、股間が変化すると同時に、疑問まで大きく変わってしまった。
この変化は大きい。
あまりの衝撃に、昼寝に通いだした保健室でさえ3日は足が遠のいてしまった程だ。
4日目に再び保健室へ行って、寝不足のせいか昼寝というより熟睡となってしまったゾロに、妙な息苦しさに眼が覚ましてしまったゾロの眼の前に、その寝惚け眼に例の写真が見えた。胸元の写真だ。夢だと思った。 ならばと本能のままに抱きつき、どうせ夢だからと頭をめいっぱい擦り付けると、ゾロはリアルなサンジから頭突きと蹴りをもらった。


頭を抱えて唸るゾロに、

―――大丈夫かオレ?
―――いくら何でもコレはねぇだろ?
―――なんか間違ってないか?

新たなる疑問が付け加えられた。
実は方向音痴のゾロ、どこかでうっかりと方向を見失ってしまったらしい。



ゾロの迷走は続く。









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