眺めのいい部屋 2






肩に激痛が走る。
サンジはおもわず息を止めた。肩を突き刺す鋭い痛みは、次第に鈍さを伴った痛みに変わり、やがてじわじわと身体全体に侵食していく。強く、弱く、さまざまに角度を変えた痛みが襲ってくる。
「…くっ」
身体の機能が停止してしまう。息が詰まってうまく呼吸ができない。歯を食いしばって、大きな波が過ぎ去るのを待つ。
顎の力がふいに弱まると、
「…はっ…あ…っ」
堪え切れずに、サンジは大きく息を吐き出した。
「……あ、なんだってんだ?…すっげ痛ぇ…」
その左腕はゾロに強く握られたままだ。空いた右手でサンジの左胸を覆うように、シャツの上から手を重ねた。
背後から腕を回して、身体から飛び出し剥き出しになった心臓を、その手に握られた。
「やっぱ心臓が早い」
「阿呆か。てめぇがいらんことするからだ。だから…」
短い毛が襟足にチクチクして、少しだけ身体をずらした。そこだけむずむずする。
「ちゃんと拭いたんか?冷てぇ」
声が追いかけてくる。
停電になった時は指先すら見えなくて、タオルも着替えも全部闇に吸い込まれてしまった。髪だけでなく、今でも全身がまだ湿っている状態だ。
「あんな真っ暗なのに?シャツを探せただけでも奇跡だろ」
濡れた肌にシャツが纏わりついて、あまり快適とはいい難い。
いつまでも首の後ろがチクチクする。
チクチクチクチクと、自分の動きに合わせて、ゾロの息遣いが聞こえている。息がふわりと首を撫でた。
自分で噛んだ場所を探しているのか、そこを確かめるように肩から襟足を湿った舌が這う。痛みがくすぐったさに置き換えられていくようで、かるく身を捩った。
耳の後ろに吹きかかる温かい息が、肩に向かって動く。
また噛まれるのかと、サンジがとっさに身構えた。皮膚にピリッと緊張が走る。
「もう噛むなっ…!痕に…」
目立つような傷痕になって、それがもしもチョッパーに見つかったら、どうしたんだと煩く聞かれる。そう言おうと思ったけど、途中で口を閉ざした。
サンジが黙ると、闇のなかに低い声が聞こえた。
「……てめぇが誘うからだ」
「俺が?」
頷く代わりに、ゾロは自ら付けた歯型の痕を口に含んだ。唇と舌で傷を覆って、癒すように何度もそこを舐める。動物じみた行為だ。
ぴちゃっと、湿った水音がサンジの耳を打った。
「噛むなって言った」
「するなと言うとするのか?俺が誘ってるって?ガキかてめぇは。自分の都合のいいように解釈してんじゃねぇぞ」
あまりにも訳のわからない理屈をこねられ、サンジは思わず笑ってしまった。
「あのさ、俺ァ訳ありで下を履いてねぇけど、つうかパンツ見つかんねぇし、一般的にいえば、パンツも履かないでなに考えてんだって状態なわけだが。これはどうだ?誘ってんのか?天邪鬼に解釈すると、やっぱ兄弟でこんなこといけないわ、って乙女の拒絶か?どっちだ?」
「予想以上というか、てめぇの頭はどこまで不憫なんだ?」
その口調は低さもトーンもいつもと変わらない。けれど、ゾロの声も笑った。
「それを世間じゃ合意という」





バンと大きな音が部屋に響く。
風はゴウと音を立てて呻り、たまに凪いだように静かになるけど、また思い出してはガタガタと建物を揺るがしている。
音に反応してか、サンジの身体が闇の中でビクッと震えた。
「…なに?」
「雨戸の鍵がイカレ気味だったから。ついにぶっ壊れたか」
ギシギシと軋んだ音がする。
妙に不安を掻き立てられる音だ。
音に耳を傾けていると、またゾロの手が動いた。臀部を割った、その奥の窄まりに冷たいものが触れて、サンジの背がビクッと反射的に反る。
「え?なんだ?」
背後にむかって問いかけた。
姿勢は最初からほぼ変わっていない。くの字で横になったままで、剥きだしになった下半身を抱くように引き寄せられ、自由のきく上半身だけが逃げるように離れてしまった。
「チョッパーの」
少し遠くなったところから、ゾロの低い声がする。同時に、ぬるっとした滑りと一緒にまた指が入ってきた。
「……っ」
えもいわれぬ妙な感覚だ。ずっとそこを弄られて、じんじんとありえない熱と疼きを生み出した。
調子に乗った指はどこまでも図々しい。無遠慮に身体の中を抉る。どうしていいかわからず、サンジはできるだけ息を殺した。身を委ねるわけじゃないが、それくらいしか出来ることがない。
「…あっ、っ」
ずるっと指を抜かれて、思わず声が出てしまった。また冷たいものがあてがわれ、今度はぎちぎちと捻じ込むように挿れられて、身体の中が一杯だ。何本の指が自分に挿っているかなど、考えたくもない。
「…っ、ヘンなの入れんなっ…!」
「薬だからヘンじゃねぇ」
「薬?」
「だから、チョッパーの封筒に入ってたやつ」
我慢していたものを吐き出すかのように、サンジは大きく息を吐いた。
「……もうサイテーだ」
早く終われ、と心から思う。我慢できない痛みじゃないが、執拗に動く指先に慣れずに、心も身体も落ち着かなくて、気が紛れるとしたら背後の男に文句をいうことくらいだ。
「チョッパーもうかばれねぇぞ。せっかく作ったのにこんな使われ方してよ…」
「傷に傷薬を塗ってなんの問題がある」
「傷って…。傷つくのが前提か…」
サンジが浅く息を吐いた。いつまでたっても呼吸の乱れが収まらず、落ち着くどころか、ますます息が荒くなってきて困る。
「…中はともかく、ここが、思ったより狭いっ…」
ゾロの腕にグッと力が入った。
「あ、や、あっ、バカ、無理に広げんなっ!」
襞はミシミシに引き攣れて、きっとありえないくらいに広がっている。
「っつ!ってえ…!」
思わず背後を蹴り上げた。拘束されてない方の脚を使って、ゾロに抗議した。
あまりにも乱暴だ。なのに、熱はだんだんと下半身に集まってきて、下腹の疼きはひどくなる一方だ。
「……痛っ。…いで。この、いきなり蹴りやがって…」
そして、
「今度会ったら、チョッパーには俺から礼をいっておく。てめぇの薬が役に立ったってな」
ゾロはいきなり武器と化す脚を封じた。自分の脚を乗せ、重みと力で動きを封じて、また指を根本まで深く突き入れた。
「あっ」
サンジの顎が上がって、背がピンとそり返る。
止めていた息を吐き出して、喉がグッと鳴った。
「…っ…マジサイテーな…。てめぇがヘボでテクなしだから、お世話になったと言っとけ…」





横になったまま、ゾロは片足だけを高く持ち上げた。
下半身をおもいきり開いて、その中心に向かってゆっくり突き上げ、前に前にと逃げる身体を壁際まで追い込んだ。
頭の天辺を壁につけて、サンジが微かに呻く。
「…っ…てぇよ…」
抗議というにはあまりにも小さく、意図せずにふと漏れてしまったみたいに微かな声だ。
一度引いて、また突き入れる。少しずつ少しずつ、深く、奥へと、腰を導いていった。

呼吸が荒い。反り返った喉から切なそうな吐息が漏れ、たまに呼吸が止めて身を震わせる。
胸に触れると心臓が大きく脈打っているのをゾロは感じた。その胸を引き寄せ、シャツの隙間から手を差し入れた。
左手で、まだ濡れている身体を愛撫する。しっとり湿った皮膚を撫でて、その指先が小さな肉の突起に触れた。
濡れた肌が外気に触れて、そこがツンと小さく存在を主張している。指の腹で揉むように捏ねて、グッと押し潰してから乳暈ごと摘まんだ。


「…やっ、そこやめっ…!」
胸を覆う手を引き剥がそうとゾロの手を握った。でもなかなか簡単に離れない。離れないどころか、何もなかったかのように、執拗に同じ手順で同じ行為を繰り返す。
「あっ、ああ!」
指先でピンと強く弾かれた後、また強く摘まれた。
「痛…っ」
あまりの痛さに身体が強張り、捻られる度に息が止まる。
ゾロの指先は左から右へと動く。そしてまた左胸に触れたとき、ビリッと電流が走った。
「あっ、あ、や、マジでやめっ…やっ」
胸が震える。
指先がかるく触れているだけなのに、どうしようもない切なさに身体が反応してしまう。
かすかな呻き声と共に、ゾロの指がギリッと小さな肉芽を握りつぶした。
「ひっ!あ、やっあああ!」

あまりの痛さに瞼の裏が真っ白になった。
闇に火花が飛び散って、ドッと汗が噴き出て、まるで花火みたいだ。でも身体に溜まった熱だけはどんどんと勝手に膨れ上がっている。
「…っ、少しは加減しろ…。マゾじゃねぇからあんまきついのは勘弁だ…」
背後に向かってさすがに文句をいうと、
「…てめぇが立たせてるから」
「乳首のことか?」
返事のつもりなのか、ゾロの額が後頭部にこつんと当たった。
「寒けりゃ誰だって立つんだボケ。だからって潰す奴なんかいねぇって。マジ痛ぇ…」
「潰してねぇ」
確認するように指の腹で捏ねられて、胸から腰にやわらかい電流が抜けた。ジリジリと熱く痺れて、凝縮された快感の種がぽうっと胸に宿る。
一度潰された組織は、痛みから別なものを拾い集めていった。

――熱くなった。
ゾロが指先で弄びながら、ひとりごとみたいに呟いた。
「痛っ……んっ」
鼻にかかった声でサンジが身を捩る。甘さを含んだ声だ。
乳首をもてあそんでいる間、背後から埋め込まれたものがそのままだ。動かない。だからというわけではないが、扱いが乱暴だから多少の痛みはあるものの、ゾロの好きにさせていたら胸の疼きがだんだんひどくなってしまった。
そこが熱いのは、きっと腫れて赤くなっている証拠だ。
「もう触んなっ…」
指が突起の上を滑っていく。乳頭を転がされ、むず痒さのあまり触られることを拒否すると、
「…自覚なしか?」
気に入ったおもちゃを取り上げられた子供のように、
「てめぇが…ヘンに…だからやめらんねぇだけだアホ…」
ゾロが不満気に言葉を吐き捨てた。




手がゆっくりと胸から下腹を撫で、そして遠慮なしに股間を握られて、またサンジの息が止まった。根本から数度大きく扱かれて喉が鳴る。
「……はっ…あっ」
同時に、ゾロが軽く引いてから、ゆっくりと腰を沈めていく。
「いっ…っ!」
身体は横向きのまま、持ち上げられたままの左脚。脚を持ち上げたままの腕は、昂ぶる中心を握っている。
強弱をつけて、根本からずるっと大きく扱かれて、はしたないほど腰が震えた。
「あ、ああ、っ…」
身体の中を掻きまわされて、先走りに濡れたペニスを扱かれて、辛いのか気持ちいいのか分からなくなって、サンジは闇の中で身を震わせた。だんだんと射精感は昂ぶるばかりで、だけど出したいのに出せなくて、快感も射精も自分でコントロールできない状態になってしまった。
搾り出すように指先で扱いて、ゾロの掌は鈴口を覆うような仕草で何度も撫でた。
「っあっ!」
甘い痺れが下腹部から湧きあがってくる。身を任せるとすぐに溺れてしまいそうなほど強烈な痺れだ。耐え切れなくて、無意識のうちに腰が動いてしまった。
「やっ、あっ…っ!」
その動きに合わせるようにゾロが動く。



また壊れかけた雨戸が大きな音を立てた。いよいよ壊れる寸前らしく、かなり悲痛な音だ。
サンジはそれに気づいているのか。ゾロは無言でまた先端をギュッと絞った。
「…もう」
股間から湿った音が聞こえる。滑りを帯びて、耳を塞ぎたくなるほど卑猥な水音だ。
「あ、あ、もっ…」
ずるっと身体から出ていくと腰が震え、奥まで埋め尽くされると思わず息が詰まる。全部持っていかれてしまうような、そんな錯覚に陥った。
「…で、るっ…」
握りこんだゾロの手の上に、それを強請るように、サンジは自分の掌を重ねた。
指先が亀頭に触れる。粘液でひどく濡れていた。我ながら呆れ返るほどびしょびしょだ。ゾロの手に包まれた物は他人の性器のようによそよそしくて、濡れて、震えながら自分の指に触れられて喜んでいる。どうしようもない有様だった。

「…ティッシュよこせバカッ」
それが返事だといわんばかりに、ゾロが激しく腰を動かした。突き上げる動きも、獣染みた荒い息も発情の甘さも、それがどちらのものかも分からないほどねっとりとした暗い闇の中で、サンジは声にならない呻きをあげた。
「んっ――――!」

「あ、はっ…」
射精の余韻に浸る暇もなくゾロが動く。
「…おい?」
中を抉るように、
「…出た、も…出たからっ…」
身体を突き上げる動きも、
「やっ…!」
とろり濡れた鈴口から、
「っ…や、さわんなっ!」
残った精を搾り出すようなその仕草も、今はただ苦痛にしか感じない。後ろだけならばまだ我慢できる。だけどゾロの手を、いつまでも繰り返すその行為を排除しようとした。
「どけっ!くそったれがっ!死ね!」
だけど身体は自由にならず、
「なっ、やめろ、もうそこさわんなって…!頼むからっ!」
激しく身を捩った。
まだ達したばかりで、粘膜がひどく敏感になっている亀頭、そこを触られているのがたまらなく辛くて、逃げようとしたら上に圧し掛かられてしまって、洒落にならないほど身動きが取れない。
武器である脚は脚で封じられてしまった。

サンジはシーツに顔を強く押し付けた。
くすぐったさなどとうに通り越して、敏感になりすぎて先が痺れて痛い。
うずうずピリピリと痛くて、なのに乱暴な手で亀頭を搾られ、鈴口をほじるように指先で弄られ、辛くて嫌で堪らない。腰がぶるぶるっと震えた。
「…うあ!そこ、やめっ…!な、ァ、アッ!」
掌で覆いながら亀頭をこねられ、堰を切ったように涙がぼろっと溢れた。ぼろぼろと頬を伝って、闇に雫が吸い込まれる。
「…っ、もうちっとだ。ここを触ってなきゃ痛てぇだけだろうがっ…」
だから我慢しろと、切羽詰った声が耳元で聞こえた。

シーツが濡れている。
涙と涎と汗と精液で、もう何処から何処中ぐちゃぐちゃになって、何がなんだか訳がわからなくなってしまった。
「…ロ、ゾロッ!」
名前を呼んだ。
「だ、めだッ!…声がっ」
大声を出したくなったけど、いくらなんでも叫ぶわけにはいかない。
暗闇の中でゾロの手が動いた。空いた手で、髪に、そして頬に触れながら、やがて辛いと訴える口を見つけた。

自分が泣いていることに気づかれたかもしれないとサンジは思う。どうしても涙が止まらない。
ずっと握られっぱなしで、こんなに嫌がっているのに、でも感じてしまっていることも、全部ゾロにわかってしまったかもしれない。そんなことを一瞬だけ考えたけど、すぐに頭から飛んでいった。
差し出された手から、意識的に顔をずらした。手首から腕へと唇を這わせて、その腕の硬く滑らかな皮膚を齧る。
口の中で皮膚と筋肉が緊張したのががわかる。
拒むように肉が硬い。
「…くっ…っ」
後ろから、獣のような呻き声がする。
低く、早く、荒い息で、自分をどこまでも追い込む男の腕に、サンジは歯を立てた。
「…ぅん、…んんっ…」
腕で必死に声を殺す。
「…んっ」
身体の中はぐちゃぐちゃに掻き回されて、もう全部いっぱいいっぱいだ。こんな状態であるにもかかわらず、ペニスははち切れそうなほど昂ぶっている。
搾られる度に、腰にぶるっと震えが走った。ゾロの手はただ搾乳するかのように動きに遠慮がなくて、もしも手に表情があったならば、無表情ともいえるようなそっけない動きだ。そんな表情がない手が、指先が、いきなり思わぬ動きをする。
指先がまた鈴口をほじった。
ただ撫でて触れていただけの指が、なんらかの意図を持って、尿道に入り込むような動作をする。
背中から腰に電流が流れ、塞いだ喉から悲鳴が迸りそうになった。予期せぬ痛みに、また涙が零れる。それらをすべてゾロの腕で塞いだ。

下半身が麻痺しているみたいな感覚だ。痺れているのに、皮膚も粘膜も感じすぎて、痛い、辛いと悲鳴を上げている。そんな苦痛ですら、いつの間にか別なものに変換されてしまった。
顎を、歯をグッと食いしばる。溢れる唾液の中に、いつしか血のにおいが混じった。
ゾロは同じ行為を繰り返す。身体を突き上げ、先を弄ぶように搾る。強く、または優しく撫でて、きっと口を塞いでなかったら、かなり情けない悲鳴を上げていたと思う。
前兆もなしに、いきなり大きな波がやってきた。
仰け反った背を小刻みに震わせて、
「…ふっ、んんっ!」
サンジは髪を振った。
「…くっ、中にっ」
出してもいいかと、ゾロが切羽詰った声で問いかけてくる。
だが、とても返事できる状態ではなかった。いい、とも、嫌だ、とも、どちらも言葉にならない。
必死でゾロの腕を噛み締めた。
波は少し引いたかとおもうと、さっきよりももっと大きな波となって凶暴に押し寄せてくる。抗えないほど大きな波。引いていくときに自分を攫っていって、もっと大きな波となって戻ってきた時にはすべてを呑みこんでいく。
「……ぐっ」
喉が変な音をたてて、瞼の裏に白い閃光が走った。
「う…ん、んっ、ふっ!」
サンジはゾロの腕から口を離した。
「っあ……はっ」
獣のような息を、おもいきり吐き出す。背中が震えた。悪寒のように腰から背中が緊張して、身をぶるっと震わせて、
「ーーーーーーっ!」
大きく弾けた。
背後からゾロの荒い息遣いと呻き声が聞こえてきて、サンジは闇の中でギュッと強く目を瞑った。
汗が噴き出て、身体の痙攣が止まらない。
目も耳も言葉も、自分のものでありながら、まったく違うものになってしまう。
どんどん熱が放出されるていくうちに、不思議と神経が研ぎ澄まされていった。重なって触れあう、その匂いや呼吸、埋め込まれているものの熱さも脈動も、薄い皮膚や粘膜が情報を拾い集めて、肌で感じとっていくような。
生まれて初めての感覚だった。





遠くで風の音がする。
つんと鉄臭い血のにおいや唾液や精液、様々な体液が混じりあった匂いがする。そして自分と、自分のものでない呼吸も蕩けてしまって、誰のものか区別がつかなくなってしまった。
全てはまっくらな闇の中だ。
闇に沈んでいく。深くて暗い、温かな泥沼へとサンジは静かに沈んでいった。


NEXT


2009/11.06