蜜色ハニィ 2









マリモのくせに…、マリモのくせしやがってと、むかっ腹が立つくらい気持ちいい。
おまけに、はしたない声が出まくり状態だ。
こんな声を出してるのは誰だ?まさか俺か、俺が発している声か?
いくらなんでもやばくないか?これじゃ仲間に気づかれてしまう。いや、ここは船じゃない。なら大丈夫か。と、次々とストッパーが解除され、ますます声が出てしまうのがまったくもってよろしくない。
思わず耳を塞ぎたくなるくらいに、自分のその声は甘ったるくいやらしい。


さすがにコックは強情だ。これだけ乱れても容易にそれを口にしようとはしない。
脇腹を撫でるとくすぐったそうに身を捩る。その動きは白い魚のように艶かしい。
腿の付け根が小さく痙攣して、まるで筋肉が快感に震えているようだ。ついに我慢ができず自ら訊いてしまった。
「…欲しいか?」


小さく頷くと、「口で言え」と、ゾロは言葉を求める。
「いいから、来い…」
「違う。欲しいかと訊いてる」
同じことだろうと思いながら、
「……欲…しい」
かなり悔しい思いでそれを口にした。散々焦らしやがってと、続けて文句を言おうとしたが、そんな場合ではなくなってしまった。
「…んっ」
丁寧に解されて、やわらかくなったアヌスでゾロを迎え入れるのは簡単だった。いつもは違う。こんなに時間をかけてそこを弄られたことはない。
だからその所為だと思うのだ。こんなにも感じてしまうのは。
自分のブツにもたっぷりとオイルを塗りつけ、ゾロが入ってきた。太いカリの部分から徐々に体内に埋め込まれてゆくと、
「あ?…アッ…アア…」
突然、尿の排泄を催すような快感が腹奥から湧き上がった。
「ちょ、ちょっと待てっ…」
要求したが、もちろん待ってくれるはずはない。出したいのに出ないような感覚、擦られるたびに腹の中が激しくうずく。うずうずと、腰が蕩けそうといってもいいくらい強烈な快感だ。
そう深い場所ではないと思うが、そこを刺激されるとどうしようもなく気持ちいい。
これは何だ?
「…そ…こっ……」、そこを突け。と、身体がそれを求める。
「もっ…と…」と、身を揺すりながらソレをねだってしまう。いっそ手離しで泣きたくなるくらい身体が切なくて仕方ない。淫らな声を気にしてる状態ではなくなってしまった。


ゾロは動く。
サンジの媚態に煽られるように激しく、その淫らな声に誘われるようにゆっくりと。
その先に待っていたものは、想像を絶するほどのコックの乱れぶりだった。
「アッ…、ア…ア、ア、アッ」
短く声を発しながら身体を震わせ、血が滲むくらい強くゾロの腕を掴んでサンジは達した。
大きく身を痙攣させながら、穿つたびに零れ落ちる精液。
何だ、これは?
触れてない、刺激を与えずともペニスからいつまでも滴る白い雫。
やめろ。そういう顔をするなと、お前が泣くのか、と叫びたいのを堪えてゾロは動く。
これでは止めるに止められないではないか。

ゾロが弾けてもサンジの痙攣は治まらなかった。








島を出航した後の航海は順調だった。青天に恵まれ、穏やかな気候が続く。
鍛錬を終えたゾロにとって、これからは大事な昼寝の時間だ。おやつまでの短いひとときを船尾で過ごす。暖かい日差しの中で、うつらうつらしていると仲間の声が聞こえてきた。

「サンジいいいいい!おやつは?おやつっ!俺のおやつっ!」
船長の声だ。
「うっせえ!まだだ!ひもじけりゃ皿でも舐めてろ!」
「皿には何も乗ってないぞ?」
「てめぇは人の話を聞いてんのか?まだだってんだろうが」
「皿は味がしねえ」
「聞こえてんじゃねぇか、ボケッ」
「今日は何だ?」
「ハニーケーキ」
「はにぃ?」
「ひらがなは間抜けだからやめろ。蜂蜜のケーキだ。癖のない、いいアカシアの蜜が手に入ったからな。味見してみっか?」
「いいのか?」
「少しならな。ほら、口を開けろ」と、サンジは蜂蜜をすくい、親鳥が雛に餌を与えるようにルフィの口元へその指を差し出した。

「痛っでええええっ!俺の指まで食う気かッ!ドアホッ!」
「甘ええええええ!」
お口の中が蕩けそうだァ、と船長が騒ぐ声とコックの怒鳴り声が同時に聞こえてきた。


その会話の、何が、どうゾロの脳内で接続されたのか、突然あの島での出来事を思い出した。
アレはすごかった。
あの夜、蜂蜜色の髪を振り乱しながらサンジは泣いた。もうやめてくれと泣いた。
深く、浅く、そこを突く度に涸れぬ泉のように体液を零しながら。
いつもより前戯に時間をかけたからだろうか。
船上ではそれにそこまでの時間はかけない。そんな余裕はないのが現実だ。いつ何時、誰に見つかってしまうかわからない状態では、腰を据えてことに及ぶのは不可能である。
仲間に現場を見られるのはうまくない。気づかれる程度にしておきたいものだ。
ナミにでも見られた日には、きっとコックは言う。「お前とは二度とやらない」
だから知らなかった。ここまでコックが乱れるとは予想もしなかった。
赤い顔で。
しかも泣きながら。
淫らな喘ぎ声を。
閉じ方さえ忘れたように開かれたままの口元を唾液が濡らし、「もう」、「駄目だ」、「壊れる」と、その合間でゾロの名前を呼んだ。
「ゾロ」、「もう」、「駄目だ」、「ゾロ」、「ゾロ」、「壊れる」、「俺を壊すな」と。

「くっ…」、思い出すだけで股間がずきずきずきずき痛くて困る。余計なことを思い出したばかりに眠気まで吹き飛んだのが腹立たしい。
最後に、『失神寸前の、壮絶に淫らなコックの表情』が脳裏に浮かぶと、頭が床につくくらい身体が前のめりになってしまった。
もう少しするとおやつの時間だ。
このまま治まらなければ皆の元へは行けない。こんな状態でキッチンへ行けば、ナミから変質者呼ばわりされながら、皆からは同情混じりの冷たい視線を浴びせられるだろう。
だが行かなければ当然おやつを食うこともできず、自分の分は船長の腹の中だ。
困った困ったと、ゾロは前傾姿勢のまま悶々とした。




「うんめえええ〜〜〜!」
キッチンの開け放たれた扉から船長の声が響き渡る。
「うん。本当に美味しいわ、サンジくん」
皆から賞賛を浴びてサンジは上機嫌だ。
「あれ?ゾロは?」
チョッパーが訊ねた。
「ゾロなら変なかっこしてたな」
「変なかっこ?ウソップ、ゾロをどこで見たんだ?」
「船尾でな、こう前のめりになってよ、『腹でも痛てえのか?』って訊いたらそうじゃないってさ」
「どうしたんだろうな?後で診たほうが…、あっ!ゾロ!大丈夫か?具合でも悪いのか?」
「あ?ああ…、もう治まったから心配ねぇよ」
「治まった?やっぱりどこか悪いのか?」
「…いや、気にするな。それより俺の…」
ゾロが言い終わる前に皆が一斉に船長を見た、その船長は視線を逸らしてあさっての方向に顔を向けた。

「ねぇコックさん。この蜂蜜はあの島で手に入れたものかしら?」
「そうだよ、ロビンちゃん。極上の蜂蜜が安く売ってたから大量に仕入れてきたぜ。しばらく不自由しねぇよ」
これなんだ、とサンジは透明の瓶に入った蜂蜜をロビンに手渡した。
「とてもきれいな色だわ」
瓶をサンジに返し、その金髪を一房摘み上げて、
「あなたの髪と同じ色ね」
ご馳走さま、とやさしく笑いながら席を立った。

「ホントだ。すんげえきれいな色…」
チョッパーが感心したように瓶を覗き込んでいる。
「何だ、そんなに珍しくねぇだろ、蜂蜜なんざ。でもよ、匂いもいいんだぜ、これ。ただのアカシアじゃねえのかな?普通のより少しゆるいしな」
瓶の蓋を開けて、人差し指ですくうとチョッパーの鼻先にぺたりと蜜をつけて笑った。
「うわっ!何するんだよ!」
ぶるぶると頭を強く振るとその蜜が飛んでサンジの鼻先について、それをチョッパーがぺろりと舐めた。
「ああ、ホントだ。フツーの蜂蜜より全然美味い。匂いも少し違うな」
「舐めるなっ!自分の鼻を舐めたらいいだろうがっ!」
そこまで舌は長くないとチョッパーが笑う。そこへルフィがじりじりとにじり寄って、
「あ、ここにもついてる」と、その耳にかぶりつくと、
「あだだだだっ!くっ、食われる…。てめぇは耳まで食う気かああああ!」
サンジが大きな悲鳴をあげた。










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