7days 3
冷えた身体に、頭から湯を浴びせられた。
「まだ少し血が混じってるな」
排泄された物を確認して、男が滅菌した金属棒に透明な液体を塗った。
尿を排泄するとき、ちりちり沁みて陰茎の芯が痛んだ。まだ痛みが残っている箇所に、冷たい棒と薬らしきものが這入ってくる。
「…っ!痛っ…てぇ…」
狭い尿道を割って、棒を元の位置に戻され、サンジは痛みを訴えた。だが男は無言だ。そんな訴えなど耳に入ってないとばかりに、陰茎の根元と睾丸を黒いベルトで縛りつける。エレクトしっぱなしのペニスがずきずきと、鈍く痛みを訴えた。
勃起したままなのが不思議で、ぼんやりと自分の股間を見た。
「鬱血してるからだ。じきに慣れる。慣れなきゃ此処じゃやっていけねぇ」
耳に届いた男の声が、言葉としての意味を放棄してるかのようだ。まるで他国の言語のように、妙に空々しく感じる。
壁に手をついて腰を突き出すよう命じられ、その姿勢のままアナルの奥までオイルを塗られた。2本の指で襞から奥まで丁寧に何度も塗りこめられた。だが、触れられないところがある。昨日男達の手によって開発された場所だ。思い出すだけで腹奥が疼く。
石鹸水で強制的に排泄を促され、きれいに洗われた部分はひどく敏感になってしまう。ひりひりと痛む襞が、粘膜が指の動きに反応してしまい、自分の意思ではどうにもならない。腰が動かないようにするので精一杯だ。
「油臭せぇだろ」
男が話しかけてきた。
「客をとるときは香油を使用するんだ。まだ調整中だからこれは普通のオイルで、ちと油臭ぇがそんなに悪い油じゃねぇ。中には媚薬入りのオイルもあってな、それはオプションだが使用する客は多い。だが常連ほど、んなのは使わねぇんだ。薬で善がらせても面白くねぇんだとさ」
客をとる。その言葉を聞いたサンジの背中がすうっと冷たくなった。わかっていても、まだ受け入れられない自分がいる。
立ったままオイルを両乳首に塗られ、そして摘まれてマッサージするように強くこねられた。
「痛てぇ!クソが!ほんとに痛てぇっ!」
身体を捩って男の手から逃げようとしたが、両腕を背後で縛られているため動けば動くほど意に反して引っ張られてしまう。
「我慢しろ。少し出しておかなきゃ、後でもっと辛い思いをするのはお前自身だ。無駄に喜ばせることもあるまいさ」
そういって、無理やり薄い乳暈と一緒に引っ張って指で捏ねた。
ここから快感など生み出されるわけないと、断定してもいいくらいの痛みだ。揉むようにふたつの肉芽を乱暴に摘まれ、やっと開放された時は熱をもってずきずきした。
同じ部屋だった。
ベッドに寝かされ、仰向けに大きく両足を開き、昨日と同じところを触られた。
2回目は早かった。
腰から湧きあがってくるのは、驚くほど甘い痺れだ。
「…あ、あっ!」
こみ上げるものに身体が耐えきれず、逃げるように思わず腰が動くと、指の腹で前立腺を弄りながら茶髪が笑った。
「そうやって素直に喜んでりゃいいものを。こうしてっと可愛げがあんだよな、コイツも」
同じベッドに腰掛けて、灰色の髪をした男が上下するサンジの胸を撫で、低い声で呟いた。
「従順だけが取り柄のガキなんざ、ここには山ほどいる。大人しいだけのウサギより、凶暴な山猫を手懐けるほうがずっと面白い」
そういって胸の突起に触れてから、男が小さく舌打ちした。
「……ここを弄りやがった……」
「昨日、アンタが引っ張ったからじゃねぇのか?」
「いや、そんなのは一瞬だ。熱を帯びてる」
「アンタの趣味なんだろ、このガキは。昨日もいつになく楽しそうだったもんな。付き合いの長い奴には解かるんだろうさ。だから爺さんだってアンタに虐められるよりはって、そこを出してやったんじゃねぇの?いたぶられるのは可哀想だってな」
「お前は少し喋りすぎだ」
男はまた白い胸を撫でて、腫れて赤くなった乳首に触れた。
「痛かったろう?可哀想に」
まだ痛む小さな膨らみを指の腹でやさしく撫でられ、くすぐったいような疼きにサンジの腰が逃げるように動いた。腰と腹から込み上げてくる何かがある。
「……頼むから…出させ…」
1回だけでいいからと、また願いを口にすると茶髪が睨みながら怒鳴った。
「だ、か、ら、てめぇはもう出す必要ねぇっていってんだろ!聞き分けのねぇガキだな!玉ァ、とっちまうぞ!その方が楽でいいんじゃねぇのか!」
縛った睾丸を掌に、乱暴にぎゅっと握ると、痛みからサンジの膝がそれを排除するように動いた。茶髪がビクッと後ずさる。
「ヤツは?」
「朝から姿を見かけないな。さては上手く逃げられたか?」
ククッと笑い、口端が捲れた。
チッと、大袈裟に舌打ちする茶髪を無視して、男はサンジの傍らに腰掛けた。優しく睾丸を撫でて、ペニスに触れることなく指先を腹から胸に這わせ、穏やかな表情で語りかけた。
「今日も射精しないでイクことを練習しよう。早く覚えるように胸も触るが、けっして暴れるんじゃない。ここが千切れるのは嫌だろう」
「アンタが弄ってやった方が早くイクんじゃねえの?」
指先を動かしながら茶髪が呟いた。
もしもこの位置でこの男が蹴りをいれてきたら、自分は簡単に吹っ飛んでしまうだろう。調教師としての腕は確かだし信頼もあるだろうが、身分は同じただの調教師だ。なのに、いつも自分の方がかなり分が悪いのではないか。
「そんなに時間はかからん。お前が先だ」
いつものように、出せない不満をそっと腹の奥底にしまった。
金髪の男が啼いている。
背後から両胸を弄られて、仰け反る喉を愛撫されて、嫌がって身を捩っている。だが、あれではまったくの逆効果だ。薄笑いを浮かべながら、嬉々として乳首、耳、首に愛撫を繰り返す男を見て、茶髪の男は自分との違いを改めて感じた。この男は本当に男好きだ。金髪のように気が強く、生意気そうな男が好みらしいのは知っている。それなりにこの男との付き合いも長い。
「ん…つっ!」
「覚えが早い。ここも気持ちいいだろう?」
とても固くなってると、指の間にある肉芽をさらに揉んだ。
「少し残念だ。こんなに感度が良くなければ、出されてなければ針を刺してあげられたのに…」
茶髪が目を落とし、眉を顰ませた。
乳首に細い針を刺し、少しづつ電流を流して育てていく。それはこの男の趣味のひとつだ。
幼い少年の身体を縛りあげて、いくら苦痛に喚き叫んでも股間だけは絶対に萎えさせない。苦痛と快感をリンクさせて、泣き濡れた顎を持ち上げて囁く。
「ここだけでイクくらい、感じるようにしてあげるから。お客様も喜んでお前を可愛がってくれるだろう」
赤く腫れ上がったものをいたぶりながら、「いやらしい形になった」と目を細めて喜ぶ。少年たちが泣きながらあの男の手に堕ちるのを、今まで幾度も見てきた。
仕事として割り切っている自分と違い、心から調教を楽しんでいる。そしてこの男の手で仕込まれた商品は仕上がりがいい。オーナーの信頼もあり、調教師でありながら、この館において一目置かれる存在だ。
「どうした?もうすぐだから仕上げてしまおう」
声をかけられて、茶髪は指先に神経を集中した。
「…いっ」
「『いい』って言ってごらん。『気持ちいい』だ」
サンジは顎をクイと持ち上げられた。
熱をもった胸を触れられる度に、身体の中で小さな爆発がおきる。出口のない爆発が幾度も繰り返され、堪えきれないものが喉から漏れた。
「ぁ…っ」
吐き出すかのように喉が鳴る。
「あっ…、い…」
「『いい』だ。気持ちいい。『嫌』じゃない。もうこんなになってるじゃないか」
きゅっと強く摘むと、サンジがビクリと身を震わせた。
「いつも小石のように固くしておくんだ。感じれば感じるほど苛めてもらえる」
「昨日少し広げておいたから、もう指3本でもいけるかもしんねぇ。締まりも悪くねぇし、吸い付きはなかなかのモンだ。どうする?1本、咥えさせてみるか?」
茶髪が訊くと、「お前はいつもせっかちだ」、楽しみの時間が短くなると、男が眉を顰め不満そうな顔をした。
「いっ…あ、あ、あああっ!」
痙攣を始めた身体に唇を落とし、サンジの口元を男が舐めると茶髪がそれを見咎めた。
「おい。それは禁止されてる」
「お前は本当につまらん。ご馳走を目の前にして、ただ指を咥えてみてろというのか?料理中の味見くらい大目に見たらどうだ」
サンジを床に落とし、跪かせた。
上半身を前に倒し、頭を床に付ける。そして腰をあげて、双丘を大きく割った。
「これくらいでいいか。最初だしな」
「いや。可哀想だからもっと細いのにしてやろう。この一番細いのはどうだ」
灰色の髪をした男が手にしたものを見ながら、茶髪がローションボトルを投げ渡した。
「抜けたらお仕置きか?」
すると、当然だという顔で、
「いいや。いきなり太いのを突っ込んで、お前が蹴られたり噛まれたら可哀想だと思ってな」
男が平然というのを見て、茶髪があからさまに眉を顰めた。顔面に食らった蹴り跡は紫に変色して、消えるまでにもう少し時間がかかりそうだった。
「咥えながら舌を動かせ」
口元の隙間から唾液がこぼれ、雫が喉を伝って胸へと流れた。
床に跪き、ベッドに腰掛ける男のモノを口に含む。
金色の髪を掴んで、自分のモノから引き離して茶髪が忌々しげにいった。
「やる気がねぇなら歯ァ抜いちまうか?そんならテクもなーんも関係ねぇしな。てめぇばっかいい気持ちになってどうすんよ?客を喜ばせてなんぼの商売だろうがっ!」
頑なに押し黙ったままのサンジに、
「ほら。もう一度だ。舌を出せ」
根元から裏筋を、舌全体でしゃぶるように舐めろと指示をした。
口の中で熱く溢れかえったモノは喉奥を刺激し、絶えず嘔吐感が込みあがる。吐き出したいのを押さえ込まれ、
「ほら。もっと締めないと」
背後から灰色の髪をした男がサンジのアヌスに触れた。抜け落ちそうな細いディルドを、また奥に埋め込まれると腰が震え、
「ここは絶対に緩めるんじゃない。どんなモノでも咥えて、そしてぎゅっと離さないように」
サンジの喉奥がまた鳴った。
カリ首は舌で回すように。浅く、深く、歯は唇で覆い、強弱をつけて吸い付け。茶髪が、「顔を上げろ」、と命令した。
「咥えながら、てめぇの泣きっツラを客に向けろ」
サンジが睨み付けるように男を見た。
眼が潤んでいるのは苦痛によるものだろう。込み上げる嘔吐を堪え、苦痛に歪む顔とキツイ視線が絡んでくる。そんな青い眼を向けられ、男の股間が急に熱くなった。
悪くない。
いい意味でも、悪い意味においてもその眼と表情は嗜虐芯をそそる。もちろん、悪い意味とはこの男にとってだ。
金色の髪を鷲掴みにして、激しく揺さぶると更に奥へと喉を突いた。
「何回言えばわかる?目は閉じるな」
溢れたように零れ落ちた涙。再び閉じられた目を開かせたまま、小さく呻ると男は喉奥へと精を放った。
「…っ、いいか、零すんじゃねえぞ」
嚥下出来ずに口から精がこぼれた。サンジが激しくえずくと茶髪の男が髪を掴み、その顔面に大きく平手打ちを食らわした。数回打ち付ける音がした後、崩れる身体を引き摺るようにその髪を掴み、
「だから、こぼすなっていっただろうが!飲み込めっ!」
強引に顔を持ち上げ、また頬を打ち付ける打音が部屋に響いた。
頭の芯が麻痺して動かない。軽く脳震盪を起こしたのか、サンジの意識が一瞬飛んだ。灰色の髪した男が指で顎をすくい上げ、
「客の体液は全て飲み込むんだ。どんなものであろうと、どんな小さな雫でも、お前の舌で舐めとれ。わかったか?」
反応が薄い青い眼に、まるで囁くように語りかけた。
起こすように持ち上げられた身体を突き飛ばし、重心を崩したままサンジはベッドに転がった。茶髪の男が命令を下す。
「額をマットにつけて」
後ろ手の姿勢で、尻だけが突き上がった形だ。
「尻だけ持ち上げとけ」
剥きだしにされたアヌスから、半分飛び出た細いディルドを抜いた。
「まだ濡れてっから大丈夫だろ?」
「いや。最初はできるだけ苦痛はない方が覚えも早い。追加しながらたっぷり塗ってやれ」
二人の会話が背後から聞こえた後、さっきとは違う物が挿入された。
湿りの力を借りてみしみしと襞を広げ、有無を言わさず侵入してくるもの、その異様な圧迫感と異物にサンジは呻きをあげた。
腹の中まで深く打たれた楔。
2〜3度軽く体内で捻られ、ゆっくりとそれは動いた。
サンジはマットに額を強く押し付けた。
静まり返った部屋に、自分の呼吸がひどく大きく聞こえる。白い部屋に響くのは自分の荒い息づかい、そして股間の湿った音だけだ。きつく目を閉じて、歯を食いしばると顔がカッと熱くなった。
いきなり抜かれた。
ぽっかりと身体に隙間ができたような感覚だ。ホッとする間もなく、また挿入されて臀部から背筋に電流が走った。
「…ぅ…っ」、いくら呻いても、背後の二人は無言だ。生温かくなったローションが内腿をつたって落ち、舌で舐められたかのような感覚に脚が震えた。
深く浅く回る。変則な動きを繰り返したあと、手の動きがリズミカルになった。
「あ、あっ…」
変化のない動き、そんなことにも自分の身体が感じているのがわかる。
背筋は何故か氷のように冷たく、なのに額から汗が噴き出て目にちりりと沁みた。いくら歯を食いしばっても喉から声が漏れる。我慢できなくてつい腰を振ってしまった、だが笑われることはなかった。
腹が苦しくなるほど奥まで3回突かれ、4回目で一気にギリギリまで引き抜かれ、狭い腸壁をえぐるようにディルドが回される。爪先が突っ張り、背中から震えが来た。まるで身体の中からペニスを弄られているようだ。
また抜かれた。
抜け出たときに、思わず大きな声がでてしまった。汗が噴き出て、マットに額を強く擦り付けた。あれほど昂ぶっていたペニスはすっかり感覚が薄れてしまっている。かわりに、腹の中に宿ったものが激しく疼いた。
3度目の挿入で腰の力が抜けてしまった。
膝が崩れ、ペニスの先がマットに触れると、元の位置へ戻すかのように尻を持ち上げられた。無言のまま両手で腰を掴まれ、深くディルドを穿たれてサンジは啼いた。
呻きとも、喘ぎともとれる小さな声で、絞り出されるように漏れた声を抑え切れず、必死で目を閉じた。挿入が繰り返される度に、湿った水音が一層激しくなる。
腹の中で、快感がうねりの如く押し寄せては引いていく。ぽたぽたとマットに滴るのは汗か涙か、サンジは知る術もなくその区別もつかない。何度も押し寄せる大きな波、引いていかずにそのまま呑み込まれた。
「あ、あ、あああっ……っ!」
腰から背中にかけて悪寒と衝撃が貫き、肩が激しく震えた。
「まずは1回」
茶髪か、または灰色の髪をした男かわからない。抑揚がない、ただ低い声だった。
背後で縛られた腕が痛む。脚も膝にも鈍痛がある。汗が目に染みて開いていられない。
途切れることのないディルドの動きに、身体の節々が苦痛を訴えた。
摩擦でアナルが焼け付いたように熱く、そして疼く。すぐにオイルで潤され、抜かれる度に溢れる滴りが内腿を伝って落ちていく。
苦痛を感じていたはずの身体の表面が、だんだんと鈍くなっていくようだ。体内へと苦痛が移動していって、その上に快感が上書きされていく。苦痛と快感が腹の中で伸縮を繰り返し、また爆発した。
「…っ、…ぁ、あ、あああ!」
痙攣が治まらない。身体が崩れ落ちると、また腰を支えられて元の位置に戻された。
「2回」
男の声がする。
2回かと、サンジはぼんやり考えた。射精がないので達したという実感がない。快感に終わりがなくて、いつまでも身体の芯に熱がこもったままだ。
姿勢の所為か、またはただ単に頭に血が昇っているからかわからないが、耳は膜がかかって心臓の音だけやたら大きくて、頭を上げようとするとふらふら眩暈がする。
ゆるやかに、単調な動きを繰り返すディルドが、身体を芯から揺さぶり支配する。大きく息を吐き出したら別人の声が聞こえた。自分のものとは思えず、サンジはまた眼をきつく閉ざした。
耳の奥が痺れる。
突かれ、中を擦られ、支配されて、答えを強要されて返事のようにただ全身を震わせた。
「明日、もう1回しておこう」
「何で?仕上がりは悪くねぇだろ?つうか、上出来だろうが」
灰色の髪をした男が濡れた手を丁寧に拭き取り、汚れた布をベッドに横たわるサンジの足元に無造作に捨てた。
「だからだ。奴を確保しておけ」
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2008/3.17