7days 2
「イッーーー!」
目が眩むほどの苦痛にサンジは呻いた。
「仕返しか?」
灰色の髪をした男が茶髪に笑いながら問いかけた。
「仕返し?とんでもない。こんなの俺が受けた痛みに比べりゃ可愛いもんだ」
茶髪が青痣の残った顔を歪ませた。
尿道を指先で開きつつ、ゆっくりと中へ管を進める。
「だがあまり傷つけるな。炎症が残ると面倒だ」
「そんなヘマはしねぇ。お、もう少しだな」
「本当にお前は導尿だけは上手い。上手いから苦痛も自由に操れる」
「ちっ。なんだよ、導尿だけってよ。でも膀胱までは入れねぇ自信があるし。ションベン垂らされちゃ面倒だしな」
茶髪が手を止めた。
そしてその管に小さな赤いマーキングシールを貼ると、確かめるように数度抜き差しして、くるりと中で回した。
「あ、あっ!チクショー、動かすな!」
サンジが叫んだ。
今度は腹の中で蟲が這いずり回る。
むずむずと、管が腹の中で生き物に変わって動きまわる。
「あんま喚くなって。次第に気持ちよくなるから。それにもう痛くねぇだろ?」
挿れられた時のような激しい痛みはないが、なによりも気持ちが悪い。身体の中に、あきらかに異物が入ってる。
逃げるように腰を浮かすと、
「なんだ、もうよがってるのか?いくらなんでも早すぎんだろ。淫乱なガキだな」
茶髪が笑いながらサンジのアヌスにまた指を入れた。
「ヤッ!やめ…」
そのとき感じたものをなんと表現していいか、それは初めての感覚だった。
腹の奥に、快感の種が宿る。
思わず腰を引こうとするのを見て、灰色の髪をした男がゾロに声をかけた。
「悪いが、暴れないように強く押さえていてくれ。それと、もっと腰を浮かせるようにな」
「うっせえ。ボランティア活動にいらん注文をつけんな」
実際のところ、かなりの脚力だった。膝下は自由にならなくとも腿の力が半端なく強い。支えを足から手に変えると、まるで子供が親におしっこをさせてもらってる格好に近くなった。
両膝から下はだらんとして、金髪としてはかなり恥ずかしい姿だろう。背後から見える耳が真っ赤だ。
「ボランティアか。たいそう高尚な心がけだ」
クククと笑ったのは無様な男の姿か、またはゾロのことか解からないが、どちらにせよ妙に癇に障るのは確かだ。
「本来、俺の仕事じゃねえ。しかし何を突っ込んでるんだ?」
「カテーテルみたいなモノだ。少しばかり太いがな。だが導尿の為じゃない」
「今、コイツの前立腺を初期化してる。ここだけでいけるようにさ。ケツと両方から開発してもらえるなんて親切だろ?」
そういうと、茶髪が何をしたのか金髪の男が大きく仰け反った。
「ア、ヤッ!」
ゾロの腕の中で男が身を震わせた。
管で腹の中を弄られ、指から受ける刺激がサンジにもたらしたのは排泄感だった。
突然、激しい尿意を感じた。
「…ま、待て。便所に…」
「何だ、排泄させてないのか?」
灰色の髪をした男が茶髪に訊ねた。
「いいや。全部すっからかんのはずだぜ」
「なら心配ない。何も出ないから大丈夫だ」
「何もな」
ゲラゲラと茶髪が笑う。
「指が疲れてきたろう。交代しよう」
男が場所を譲ろうと指を抜くと、その腰がふるりと震え、
「そんなに俺の指が名残惜しいか?だけど、こっちのお兄さんのほうがテクニシャンだ。たんまり可愛がってもらえ」
そういって、ピシリと白い尻を叩いた。
「随分と狭い。だが締め付けは悪くなさそうだ」
男の細く長い指が2本、腸内で動かされると激しい欲望が湧きあがる。
「……っ…ダメだ…漏…る、漏れちまう」
「栓がしてあるから何も漏れない」
「…ん…、なァ、出させろよ…」
「駄目だ」
「…え?…な…んで?」
「それをお前はこれから覚えなきゃならない。その為に俺達がいる。いいか、ここで感じて、射精しないでいく」
「…出…さないで?そんなの無理だ…」
「無理じゃない。覚えるんだ」
「…無理だ」
「嫌でもできるようになる」
「無、理、だっ!」
サンジが大声で喚く。その口に茶髪が布を押し込んだ。
「うるせぇな、おめぇは。喚くよりも啼け。上手く啼けねぇんなら黙ってろ!」
男の指は尿意ではなく激しい射精感をサンジに与えた。だが、身体の奥まで刺された管が出口を塞いだままだ。
口に含まされた布の隙間から荒い息づかいが漏れ、サンジの身体が微かに痙攣を始めた。
「出さないでイクことが出来んのか?」
ゾロが疑問を口にした。精液が尿道を突き抜ける瞬間が男にとって最大の快感だ。少なくとも自分はそうだし、アレに勝る快感はないと思う。あれこそが男の『イク』ことだ。だから、その開放なしで達する方法があるのか、ゾロは疑問に感じた。
「出来んぜ」
茶髪が布で指を拭きながら答えた。
「逆流性射精じゃなくてな。どうやっても出来ねぇ奴もいるが、ある程度は訓練次第でどうにかなる。この場合は調教だけどな。客の中には汚れるからって精液を好まないヤツも意外と多いんだ。野郎相手に我儘な話だぜ。気持ちよけりゃ出んのは当たり前なのによ。コイツはそういう客向けに仕込む」
「かなり感度はいい。意外と早く仕上がるかもしれん」
男が指を抜いた。尿道に差し込まれた管を、くるくる回して刺激すると腹の中で爆発が生じる。それを逃がそうと、サンジが思わず腰を振った。
「いい子だ。そうやって腰を振れば客が喜ぶ」
灰色の髪をした男が空いている手でサンジの髪を撫でた。
優しく髪を梳いて、指先を頬から喉、鎖骨を撫でてそして乳首に触れた。
「ここも大きくしておかないとな。こんなぺったんこじゃ客も虐めがいがない」
強く摘ままれ、痛みから逃げようとしても肩が外されて身動きがとれないサンジは仰け反ってゾロの肩へ頭を乗せた。まるで背後からもたれかかるような仕草だ。
ゾロの眼前に、金色の頭で遮られていた視界が開けた。
そこには胸を摘んで引っ張られ、屹立したペニスの先に通された管を弄られている男の姿があった。
大きく裂かれた両足。管の隙間から、零れ落ちる透明な滴りも見える。
「絶景だろ?なかなか見られる光景じゃない」
茶髪が薄笑いした。
「あーあ、泣いちゃって。まるで俺らが苛めてるみたいじゃねぇか。それとも泣くくらい気持ちがいいのか?」
茶髪がサンジの口から布を抜き取ると、
「…だ、出してぇ…、出ねぇよ…」
か弱い声で強請った。
「出したいじゃねぇだろ?もうおめぇは出さなくてもいいんだって。いい声で啼いてみろ。だが無駄にデカイ喘ぎ声はやめろ。芝居だってばれる」
また管をくるりと回した。
「ヤッ!アッ、アア、もう触るな!」
「違う。もっと中を掻き回してください、だ。言ってみろよ」
「……っ」
反発からか、またサンジが沈黙した。噛み締めた下唇からじわっと血が滲んだ。
「いつまでも聞き分けが悪いと、腹ん中に電気流すぞ。聞いてんのか、こら!」
それでもぎゅっと眼を閉じ、深くうな垂れたままだ。
「それくらいにしとけ。ほんとにお前はサドだな。初めてなのに電流はないだろう」
そう灰色の髪の男が茶髪を咎め、サンジの顎を持ち上げて、
「辛いか?」
訊ねた。
返事がないと、もう一度訊ねる。
「辛いんだろう?」
閉ざされた唇を親指がゆっくりとなぞっていく。
「そんなに我慢することはない。お前は初めてなんだから」
辛いのかと、また訊ねると、サンジの頭が小さくこくんと下がった。金色の髪がさらさらと顔にかかり、それを男は指でかき上げて、
「だが、気持ちよくなる。もっともっと、辛いのか気持ちいいのかわからなくなるくらい、お前の中で爆発しそうになるだろう。だからどうしても我慢できない時は声にしろ。ずっと我慢してから漏らすんだ。ほら、もっとお腹に神経を集中してごらん」
またアヌスに指を入れた。
「…ん、ん」
「気持ちいいのが大きくなってきただろう?大丈夫だ。ここだけでいけるようになる。もっとソコにあるモノを大きく育てるんだ」
もっと。
もっと神経を集中して。そう男が何度も呟く。
「……あ…」
もう片方の手で、管を腹の中で回されサンジがまた喚いた。
「ア、アア!そ、それ、抜けって!」
「頼むときは『抜いて下さい』だ。言えるね?」
男が優しく語りかける。身体に差し込んだ指はそのままに、小刻みに管を動かす。
「ヒッ…」
ねだるように腰を振って、
「……抜…ぃ…」
抜いてくれと、深く項垂れ、それは消え入るかのように微かな声だった。
男の手がゆっくりと上がった。管が抜かれると、血の混じった透明な液体がとぷりと滴る。
「薬も塗っておけ。お前が乱暴にするから血が出てるじゃないか」
「こんな出血はすぐに止まるさ。太さはこのくらいでいいか?」
茶髪が取り出した物は、細いチェーンがついた太さが3〜4ミリくらいの、先にまあるい球がついていた10センチ程度の金属棒だ。
チューブから液体を棒に塗って、それを灰色の髪をした男に手渡す。
それを見たサンジは身体を硬直させた。
「イッ、イヤダ!」
「大丈夫だ。痛いのは最初だけで、すぐに慣れる。それに傷ついたところには薬も塗らなきゃならない。腹の中を弄られるよりはマシだろう?」
力を抜いてと、管を抜いた後の少し開いた尿道に金属の球を差し込んだ。
「!!イ、イッーーーーッ!」
ゆっくりと根元まで埋め込むと、抜け止めに雁首をチェーンで留めた。
サンジの顔を持ち上げて、濡れた頬に残る雫を指ですくう。
「今は痛いだけかもしれないが、いずれここも感じるようになる」
お前は素質があるからと、優しく声をかけながらアヌスに指をいれて前立腺を刺激した。
「ひっ……」
「もっと身体の力をぬいて。ここに神経を集中するんだ。出来るね?」
ペニスが痛くてずきずきする。出したくて、思い切り射精したくて、爆発しそうな衝動にサンジは叫びそうになる。
「声は我慢しなくていいから」、そう囁かれて、堰を切ったように喉から漏れ出たものは淫らな声だった。
「何だ。いい声で啼けるじゃねぇか」
立ったままそれを眺めていた茶髪が、「出し惜しみしやがって」と低く呟く。
金髪が指だけでここまで感じているのを、ゾロは不思議な思いで見た。幾分脱力した身体で、内腿だけが細かく痙攣している。無意識か、男は腰を振っていた。
16〜7くらいだろうか。自分よりも少しだけ若そうだ。
前に見かけた子供を思い出す。
あの子供じゃなくて良かったとゾロは思う。これが小さなガキだったら痛々しいが、この男ならあまり気にしないですむかもしれない。
かなり生意気そうだ。
もっとやられればいいとはさすがに思わないが、気の毒だとも思わない。
「気持ちいいだろう?」
灰色の髪をした男が語りかけると、サンジは項垂れたまま、微かに呟いた。切ない声で啼いて、
「……………ぇ」
「何?聞こえない?」
「……怖…ぇ」
その時、ニッとした顔に浮かんだのは、氷のように冷たい笑いだった。だが声だけは優しい。
「怖くないから」
アヌスから湿った音がする。いやらしい音と荒い息遣い、話し声よりも高めの喘ぎ。
「…怖ぇ…ぇ」
身体の中が痺れる。突き抜けそうな喜びの爆発だけが腹に溜まっていく。大声で泣きたくなるくらい、それが怖い。
自分の身体が変わっていくことは恐怖だ。
男の指がサンジを追い込む。
どこまでも追い詰めながら、優しい言葉をかける。
「気持ちいいだろう?お前に中がねっとりと熱く、いやらしく蠢いてる」
前立腺を撫で、押され、抜き差しされて指を広げる。
腰が動くのは本能だろう。
出口を塞がれ、欲望は捌け口を中に求めた。
「あ、あああっ、やめ……、怖ぇえよ!」
もうやめてくれと、胸を反らし熱い息を吐き出すのを見て、男は前立腺を指の腹で押した。
強く、優しく。揉み解すように。
「い…、あ…っ、ああああああああっ!」
サンジが痙攣を起こした。大きく身体を震わせて、甘い声で歓喜の息を漏らす。
指の動きに合わせて、踊るように身体が揺れた。
「初日とはな。なかなか上出来だ。思ったより声もいい」
茶髪がそういうのを聞いた、灰色の髪をした男はニッと、
「上出来どころじゃない。かなりの上物だ。中がすごいことになってる」
口を三日月のように鋭く切り裂いて笑った。
「へっ。思わぬ高額商品か。仕事が増えちまった」
「あまり傷つけるな」
「もっとガキなら可愛げがあんのに。年がいっちまってるから生意気でしょうがねぇ。それよりも、いつまでいかせてるつもりだ?少し眼が虚ろになってんぞ」
「客に比べりゃ俺ははるかに優しいと思うが?それにまだ子供だ。怖い怖いって、可愛いじゃないか」
茶髪が呆れたような表情で、
「アンタさ、俺のことサド呼ばわりするけど、違うよな?優しい言葉なんかで誤魔化してるが、自分がどんな顔でガキ共を追い込んでるか知ってんだろ?」
誰よりも楽しんでるくせにと、ただ身体を震わせて喘ぐ、金髪の男を見下ろした。
身体の痙攣がまだ止まらない。
男から受ける指の動きに弄ばれてるようだ。どんな刺激を受けているかゾロにはわからないが、快感に打ち震えているのはわかる。下半身から力が抜けていた。
「おい。もういいだろ?俺は仕事に戻る」
そう二人に声をかけると、ゾロは腕の中の男をベッドに置いた。ぐったりと四肢を広げた状態で、ピクピクと痙攣したままだ。
肩と脚を戻すとき、男が辛そうに呻いた。苦しそうな息だったが、関節による苦痛か、または快感の苦しみかゾロには区別がつかない。
「ああ、ご苦労だったな。明日も頼む」
灰色の髪した男はやっと指を抜き、布でオイルを拭き取りながら、さも当然のようにゾロにいった。
「断る」
「何故?頼んでるのに」
「明日は用事ができるやもしれんからな」
「じゃあ、何も用事がなければまた頼むとしよう」
ゾロの眉がピクリと上がった。
「鉄の足枷でもすればいいだろうが」
「そんな無粋なモノを使うつもりはない。大事な商品がそんなので傷んでもいいのか?商品を傷つけないようにするのもお前の仕事じゃないのか」
男を睨みつけ、部屋を出ようとするとまた引き止めた。
「せっかちだな、お前は。ついでにもうひとつ頼みたいことがある」
また頼みごとかと、うんざりした思いで足を止めた。
「コイツを102号室に運んでくれ。場所はC棟だ」
「何センチにする?」
「3センチでいいだろう」
短い会話の後、茶髪が横たわったサンジをうつ伏せにし、双丘を開いてアヌスに黒く短い物体をあてがった。グッとそれを埋め込むと、苦痛からか低く呻くが抵抗はしない。
「抜いてやんねぇのか?」
「たかが一晩だろう」
「挿れたばかりだ。すぐに抜いちまったら拡張になんねぇよ、バカ」
「バカ、それじゃねぇ。チンコに挿れた棒は抜いてやんねぇのかって訊いてんだ、バカ」
「この…」
茶髪が睨みつけるのをゾロは無視した。
「アレが抜けるのはまだ先だ。躾が終わってない。塞いでなくても粗相しないくらいにならないと」
灰色の髪をした男の冷めた声がする。それに続いて茶髪が、
「それにな、もっとブッといのを突っ込んで、ションベンしても感じるくらいに仕込まなきゃなんねぇんだよ。手間暇かかんだぜ、ウチの商品はよォ。そこらの安もんの男娼と一緒にすんな。そんくれぇ覚えとけってんだ、バァカ!」
しかめっ面でそう怒鳴った後、「忘れてた」と、今度はぐったりした男の股間を開き、そしてまだ半勃状態の根元と、睾丸を黒く細いベルトで縛り上げた。
何のためにと、ゾロはもう訊く気にもなれない。
処置が終了した金髪の男をシーツに包み、肩に担いで無言で部屋を出た。
反吐が出そうなくらい胸糞悪い場所だ。
床に苦い唾を吐き捨て、そのまま足早にC棟へと向かった。
NEXT
2007/10.20