※麦わらの一味、合流後妄想。ネタバレっぽいのも含みます。



【コックはメイド様!】



麦わら一味のコックは、本場カマバッカ仕込の拳法とゼフ秘伝の蹴り技が自慢な、海のコックさんだ。
料理人なのに仕事も日常もほぼスーツ姿で過ごす。
だが、何か意味があるのか、あるいは趣味か、または病気か定かでないが、何故かメイド服のまま戦うことがある。
すっごく短いスカートで、蹴り技を繰り広げるコックさんは、
「アンタ男だよな?何でメイド服?つうか、パンツ見え…」、ツッコミ入れる敵に、
「おうよ、俺は男の中の男だ。ひとつ教えてやろう。メイドさんのスカートの中は秘密の花園ってな、無断で覗くとバチがあたんぞ」
と、まずは頭の天辺にかかと落とし、そして鳩尾に三発、脇腹に二発、両頬に五発の蹴りをわずかコンマ数秒、瞬きする間に計十発食らわせ、
「な?バチだろ?」
ケケケと笑う。



「どうなってんだ、こん中は?」
金魚みたいにびらびらしているといって、まるで雑誌のページをめくるかのように無造作にスカートを持ち上げる男と相変わらず喧嘩ばかりしている。
「相変わらずだなヘンタイ。欲求不満が高じた挙句に野郎のスカートめくりか?」
呆れ顔で睨むと剣士はふんと鼻を鳴らした。
「メイド服着て喜んでる男にヘンタイ呼ばわりされるいわれはねぇ」
「誰が喜んでんだ誰がっ!俺が好きで着てると思ってんのか!」
「どう見ても喜んでる。敵にパンツ見せて」
「見せてねーーだろっ!!」
「いちいち怒鳴るなアホ!あんだけ脚振り回してりゃフツー見えんだろっ!!」
「見せパン見られて、それがなんだってんだ!」
「やっぱ見せてんじゃねぇか!」
「だああああああ!うるせぇなんてもんじゃねぇぞ!俺のパンツなんかほっとけ!男のスカートめくって喜ぶヘンタイにゃ言葉も通じねぇのか!クソがッ!」
「そんなんで喜ぶほど落ちぶれちゃいねぇ!ざけんなっ!」

と、甲板で見苦しい喧嘩するも、ツッコミを入れる仲間はいない。
器物を破損したり、または度が過ぎて煩いとナミからお仕置きの鉄拳が振り下ろされることもあるが、ウソップやチョッパーなどは時折眼を潤ませつつ、
「…この無駄なエネルギーの放出が、いや、ただ単に騒々しいだけというか…、ヘンなのは相変わらずだし、ようやく戻ってきたって気がすんぜ…」
確認するかのように何度も頷いた。
つまみ食いが発覚した船長がメイド様なコックに追い掛け回されても、皆は優しく微笑んだ。


メイドなコックさんはレディに優しく男に厳しい、男の中の男だ。
だが、いくら優しくしても女はどこまでも素っ気なく、どんなに怒鳴っても男は食い物と酒に意地汚いだけで話なんか全然通じないけれど、それでもめげずに毎日頑張っている。
けして健気とは言いがたいが、メイド服で戦う姿も立派に成長した彼の一面なのだ。
あのコックが女装するくらいだ、いろいろと人には言えぬ試練があったのだろう、本人が説明しなくとも勘のいい仲間達は皆そう考えた。
ただひとり、微妙に鈍そうな男だけが平気でスカートをめくり、仲間の誰も気に止めないようなコックのパンツなんか気にするのであった。





END


2010/08.25