「…おい……これって…?」
「ちっと見ねぇ間にすげぇことになったな。どうりで重いはずだ」
「…まさ…か、…ト…ト………、ろあああああああ、残念、耳がねぇ!」
「耳?」





「懐かれるのも容易じゃねぇ」
「……………」
「ずしっと頭が重いような。これが頭痛というやつか」
「……………」
「なんとか言え」
「言ってもいいのか?」
「いいから俺の心配しろ」
「てめぇの頭と頭の上が大変なことになってる。どっちかといえば、気づけないお前の頭が俺は心配だ」






「懐いてもらえて良かったな…」
「…想像以上に嬉しくねぇ。つうか重い」






「ようやく歩けるようになったと思ったら…。なんで俺にくっ付いてくるんだ!」
「……ガキめらが。誰がずっと温めたと思ってやがる?待てお前ら、ふざけんなこら!」
「実はカルガモか?だからくっ付いてくるなというに!」
「飯食わせたヤツがそんなに偉いんか!」
「邪魔くせぇーーー!」
「ちっとは俺に懐いてもバチはあたらんぞ!だが面倒は見ねえ!」
「そんなんだからてめぇにゃ懐かねぇんだ!ボケーーー!」





「………薄々気づいてはいたが………この甲斐性無しめ……」






「てめぇら俺を食う気か!」

「ってのは冗談として、人のツラ見りゃピーピー鳴きやがって…」

「一日何回食わせてると思ってやがる」

「俺を見ると口を開けるのはなんの条件反射だ?」

「…ピーピーピーピーうるせえったら…」

「おい、たまには後ろを見てみろ。温めてくれたかあちゃんが寂しそうだぞ」

「…だから俺みて鳴くんじゃねぇってば…」

「また飯探しかよ……」






「お、いきなり巣が豪華になりやがった」
「俺様が作ってやった。で、どうするよこれ」
「生まれちまったもんはしょうがあるめぇ」
「そういうもんか?」
「そういうもんだろ」
「相変わらず大雑把だな。それはそうと、何でこいつらは俺をじっと見てるんだ?」
「腹が減ったから」
「チビとはいえ生きてりゃ腹も減るだろうさ。だけど何で俺を見てるんだ?」
「腹ペコだから」
「それはわかった。だからどうして俺を見る?」
「腹がペコペコベッコリだから」





「メスにゃ見えんが」
「そらオスだからな」
「なら、てめぇは特別なんだろ。いろいろ勘弁してやってる俺はやさしい」
「…それは喜ぶところなのか」
「あたりまえだ。喜べ」
「素直に喜べるかボケ。話は戻るが、もしや託卵の可能性もある。それなら辻褄が合うぞ」
「俺の股に卵を置いたヤツがいると?」
「1個か全部かは知らん。お前がオスだと言い張るならおそらく全部だ」
「オスの俺に託卵?キュートだから?」
「おめぇの股がゆるいからだ。アホウめ」
「まさか、俺が他のオスとナニしてあんな色の卵が生まれたと?」
「違うんか?」
「繰り返すが、俺がオスとナニ?」
「繰り返せさなくてもかまわん」
「しつこいようだが俺が他のオスと?」
「しつけぇ」
「なんでオスの俺がオスと!」
「………」
「俺はキュートで」
「………」
「確かにカッコイイが」
「毛を逆立てて怒ってる最中に口を挟むようだが」
「だからって、何でオスとナニしなきゃなんねーーーんだこら!」
「俺もオスだ」














「何であんな色なんだ?」
「…なんでって。何でだ?」
「一匹だけヘンだろうが。しかもデケェ」
「卵の栄養状態がよかったとか?」
「ボケ。身に覚えはねぇんかと訊いてるんだ」
「身に覚え?」
「……おめぇ、まさか」
「………まさか?」

piyo 2009


▼下へいくほど新しいです。可愛いくせにナマグサイこともします。