夜はお静かに
サンジの部屋でテレビが喋っている。
肩こり、腰痛、皮膚病などに効果があると、白濁した湯につかりながら、ゆったりとくつろぐ人々を映し出す。
「俺も行きてぇ…」
サンジが呟いた。
「ジジ臭せぇ」
「阿呆?てめぇやっぱ阿呆だろ?湯治場じゃねえんだ。温泉だぞ、温泉。ジジババばかりじゃねえ。つうか行きてぇ、温泉行きてええええええ!!」
でも、お前と二人じゃ嫌だとサンジは不貞腐れ、ごろっと横になったままクッションを抱いた。下からテレビを見ている。
「ふん。俺だっておめぇと二人っきりで旅行なんざゴメンだ。癒されに行くのか疲れに行くのかわかったもんじゃねぇ」
いいから一人で何処でも行ってこい、とゾロの返事はどこまでもつれない。
「美青年の『ひとり温泉ぶらり旅』も悪かねぇけどさ、少しばかり薄ら寂しくねぇか?」
「何処の美青年の話をしてんのか知らねぇが、俺と一緒じゃ嫌だって抜かしたのはお前だ」
「確かに。2人っきりじゃ嫌だ。だが4人なら構わねぇ」
「4人?誰のことだ?」
「……誘え」
ゾロに詰め寄り、
「……いいからお連れしろ」
一緒に行きてぇ、ヨサクやジョニーじゃねぇぞ絶対間違えるなと胸倉を掴んでゾロを床に押し倒し、
「ナミさんとロビンちゃんだ!温泉に美女はつきものだろうがあああああ!」
サンジが叫んだ。
連日の快晴だ。
どうやら天候に崩れはなさそうである。店の定休日と代休を利用して、4人の都合を調整してどうにか宿の予約が取れた。
サンジは朝からとても機嫌がいい。
「のほほほほ」「うほほほほ」、すっかりあやしい人間に成り下がっている。「恥ずかしいから離れて歩け」、とゾロに嫌味を言われても、それでも笑っていられるくらい上機嫌だ。
サンジの車で、サンジが運転して、ゾロが助手席に乗り込み、当然のようにナビをしようとして皆に猛反対をうけた。サンジとナミには罵倒されたといってもいいくらいだ。
結局助手席にはロビンが座り、後部座席にゾロとナミが座った。そんなことがあったからか、ゾロは朝から少々機嫌が悪い。ニコリともせずに仏頂面を隠そうともしない。
二人は付き合って4年になるが、ゾロとサンジが旅行に行くのはこれが初めてだ。その旅行にナミとロビンが同行している。
どれだけ罵倒されようと最初に断れば良かった、今更ながらゾロは後悔した。何がどうとうまく説明できないが、嫌な予感がする。そして、こういう時の勘は外れたことがない。
ナミとロビンは同じ系列の会社に勤務している。もちろんゾロも一緒だ。そしてサンジはコックで、共通の話題といえばゾロのことしかない。何かにつけゾロのことが車中の話題に上がった。ナミは社内でのゾロの様子を面白おかしく話し、サンジは高校時代のロクでもない話まで持ち出して二人の笑いを誘う。ますますゾロの機嫌が悪くなる。
夕方までに旅館へ到着すればいいと、途中で観光名所に立ち寄った。
それは滝の名所であったり、どこぞの鍾乳洞とか、なんたら博物館と呼ばれる建物や、風光明媚なほにゃららの吊り橋など、意外とご年配の方々が多い場所だった。
何を見ても、何処へ行っても機嫌のいいサンジの横で、
「うんキレイ。キレイな絵葉書みたいでキレイ。だから何って感じだけど」
「あら、だって観光名所ですもの。せっかく連れてきてもらったのに、あまり正直な感想はどうかと思うわ」
旅行慣れした女性の言葉はどこまでも現実的である。横にいるゾロの機嫌は当然悪いままで、回復の兆しはまったくといっていいほどなかった。
夕方、予定より早い時間に宿へと到着した。
予約した部屋は二部屋だ。宿の計らいか両隣に位置している。
「お前さ、ナミさんとロビンちゃん、どっちがいい?俺はどっちでも構わねぇけど」
ピンクのハートを飛ばすサンジに、ゾロは溜息で返事をした。呆れ返ってまともに返事する気もない。どっちがいいもなにも、妄想は口にするなと金色の頭をブッ叩きたいのを我慢するので精一杯だ。
そしてナミとロビンはキーを手に部屋へ向かうと、
「せっかくだから夕食前に温泉に入ってくるわ」
二人の眼の前でドアが閉まった。
「何、ぶすったれてんだ?」
「別に」
ゾロは湯に浸かりながら目を閉じた。
「別にってツラじゃねぇけどな。せっかくの旅行だってのに、協調性のねぇ奴」
いつまでも不機嫌そうなゾロを無視して、サンジは湯船を泳いだ。
それなりに広さのある大浴場だ。落ち着いた色調で統一され、暗すぎず明るすぎず、柔らかい照明の中にほんのり白い湯気が立ち上がる。
日曜日の宿泊客はかなり少ないらしい。しかもシーズンオフとあって宿はほぼ貸切状態で、ようするに、この男湯には2人を除いて誰もいなかった。
「ここの温泉は肩こりにいいんだってさ」
「それと腰痛にも」
少しのぼせたのか、サンジは窓際のスペースへと移動した。やけに赤い顔をしている。
「そんなにあちこち痛むのか?」
「誰かさんに酷使されてるもので」
サンジはコックゆえ、普段から立ち仕事が多い。いくら慣れているとはいってもそれなりに腰に負担がかかることもある。それをあえてゾロの所為にしてみた。
「俺?アホか、いつも奉仕してるのは俺の方だ」
「なにが奉仕だ。ふざけるのも大概にしろ。好き勝手してるの間違いだろ」
ゾロはサンジの思うとおりにならない。いい意味でも悪い意味でも、予想の斜め上をいく行動をする。
男を受け入れることに対し抵抗を感じることはさすがにもうないが、それでもたまにきつく感じることはある。ただ抱き合っているだけで充分だと、だがそういう時に限って激しい行為を要求される。できれば優しくして欲しいと、口が裂けてもいえないサンジの想いを、当然だがゾロは汲み取ることができない。受け入れる側の負担は理解してもらえない。
「とにかくその仏頂面はやめろ。人の不機嫌は移る」
「ふん。ならばてめぇが俺の機嫌を取ればいい」
いつに間にやら移動してサンジへと近づき、腕を引いて湯船に落とし、そのまま抱きしめた。
「ここでか?」
サンジが怒鳴った。
「ふざけんなっ!大浴場だぞ!?貸切じゃねぇぞ!いつ何時誰が入ってくるかわかんねぇだろうがっ!それを、この、この、このたわけがっ!寄るな!離れろ!」
迷惑だと、無理やり剥がそうとしたがしがみついて離れようとしない。
「部屋まで待てねぇのか?」
「誰かさんが煽るもので」、そういって、濡れた首に唇を落とした。
いきなりスイッチが入るゾロを、未だにサンジは理解できない。
どれがスイッチなのか、何故に、どうして、どのタイミングでそうなるのか、まったくわからないのである。
そしてどこまでも自分中心に動いているのに、結局引きずり込まれてしまうのが腹立たしいやら情けないやらで、そんな自分はもしかするとお人よしではないかとサンジは密かに思っている。
湯に濡れた肌を抱き寄せ、ゾロは手をサンジの背後に回した。背中から腰、そして臀部を割って窄まりに指をいれ、アヌスを愛撫する。
「…う…−−−−−−。…ん…−−−−−−」
サンジが呻った。指と同時にお湯まで体内に入ってきたようで気持ちが悪い。
「…やっぱダメだ。他の奴が入ってきたら…、マジやべぇって…」
「そしたらやめる。いいから呻るな。色気がねぇ」
「俺にそんなものを求める方が間違ってる。それより勃っちまったブツはどうすんだアホ…」
「そんなのはタオルで隠せ。水ぶっかけて冷ませ。俺のはともかく、てめぇのは簡単に隠れ…」
いきなり頭突きを食らった。
「痛てぇぞ、この野郎!」
「ふざけんな、クソ野郎!」
それでも指は挿ったままだ。
温かい湯の所為か、いつもより短い時間ですっかり柔らかくなったアナルをゾロは更に広げた。
柔軟性のある襞が指に吸いつくように広がっていく。温泉独特のぬめりが挿入を容易にしているのか、数本の指を根元まで入れると、そのまま半勃になった自分のものを下から押し込むように挿入した。
まだ勃ちきってないものを根元までゆっくり埋め込んで、首や鎖骨を愛撫しているうちにサンジの中で完全にさせる、ゾロは近頃これがお気に入りだ。
焦らすように耳を舐め、口に含むとグミのような弾力性だった。赤くなった耳朶を何度も甘噛みしているとサンジが微かに声を漏らした。熱い吐息がゾロの首を撫でる。
風呂場で行為に及ぶのはこれが初めてだ。
ゾロは大学に入った時点で一人暮らしで、サンジも3年ほど前に祖父のもとから離れマンション暮らしで、その手の場所に困ることはない。だからといって、大の男が二人で一緒に入って、ゆったりできるほどゆとりのある風呂はどちらにもなかった。
慣れた行為でも、場所が変われば新鮮に感じるのは良くあることだ。
温泉の白い湯気が、赤い顔したサンジをやわらかく包んだ。
頬や首、そして胸元と、すっかり色濃いピンクに染まり上がった。いつものように乳首を撫でると、それがなかなか硬くならず、いくら指先で玩んでもずっとふにゃふにゃのままで、それが少しばかり気に入らなくてゾロは指の腹で、捻るように強く潰した。
サンジが呻き、ゾロにしがみついた。
そして潤んだ眼で、まるで挑むような、強く睨むように、悔しそうな顔をして乱暴にゾロの頭を抱くと、サンジは自ら腰を動かした。
行為の合間にふと見せる、そんな表情がゾロは大好きだ。
最近、少しだけサンジは変わった。
以前のように行為中に口汚く罵ることがなくなり、替わりに切なそうな顔をしたり、気持ちいいのか辛いのかわからない顔を見せたりとか、さっきのように表情が雄弁になってきた。それを見ると何故か身体の芯が熱くなる。
優しくしてやりたいと、そんな気持ちを同時に、もっと、もっとどこまでも追い込んでみたいという、二つの感情がゾロの中にはある。追い込むことは容易く、そして優しくすることは意外と困難だ。
今はこの場所で、もっと困らせてやりたいとゾロは考えた。ただ啼けばいい。誰が入ってくるかと気になるのか、勝手に声を殺しているのが気に喰わない。昼間、女二人にサンジがサービスしている姿なぞ、思い出せばただただ苛立たしいだけだ。
湯が揺れる。
白い湯気が流れる。
ふたりの動きが水面に波を生み、湿気を含んだ部屋が喉奥から搾り出された声をなやましく響かせる。
喉に顔をよせて唇を落とすと、脈が非常に速かった。
ゾロの耳元で、微かに「…でる」とサンジが呟くのを聞くと、その根元部分を指できつく締めた。射精するのを塞き止める。辛そうに眉を顰めるのを無視して、そのままゾロは下から突き上げた。
根元を絞ったからと、出すことができないわけではない。圧迫することによって射精をコントロールして、ゆっくりと、少しずつ放出させる。快感を持続させるためだ。
「あっ、ああ、あっ…」、短い声を発し、サンジは放ち続けた。
身体を痙攣させながら、両腕を強くゾロの首に絡ませる。
腸壁がぎゅっと収縮し、痛いくらいに締め付け、まるで吸い取られているような錯覚を覚える。腸が痙攣を起こしたように締まった。
ようやく出し切ったのか腰がピクピクッと二度痙攣して、それを見届けるようにしてゾロが達した。
サンジの顔はピンクをはるか通り越して、猿の尻に負けず劣らない赤さだ。
荒い息を何度も吐いて、全身までもが真っ赤になって、そして何故かにへらと笑うと、
「…ほ…にゃらろ」
謎の言葉を残して、そのまま後に倒れた。大きな飛沫と共に音が反響する。
「この野郎」、もしかするとサンジはそう言ったつもりなのかもしれない。
意識のない男を肩に担ぎ、ゾロが男湯から出るとそこでナミとロビンに出くわした。
近くのソファーに横たえ、とりあえず近くにあった新聞で、パタパタとサンジを扇いだ。
「のぼせたの?」
「湯あたりしたらしい」
その言葉通り、真っ赤な顔でぐったりしたままで、はだけた浴衣のから覗く肌も赤く、呼吸がやけに荒い。せっせと新聞で扇ぐゾロに、ロビンが良く冷えたスポーツドリンクの缶を3本手渡した。
「そこの自販機で買ってきたの。1本は彼に飲ませて、残りは両脇にあててまずは体温を下げるといいと思うわ」
礼をいい、ゾロが素直に指示に従う。力の入らない身体を抱き起こし、いわれたとおり水分を取らせ、そして両脇を冷やした。
「お大事に」、そういい残して、彼女たちはその場を立ち去った。
「ずっと温泉に入っていたのかしら?」
部屋へ戻る途中のことである。歩きながら、ナミが独りごとのように呟いた。
自分たちと同じ頃、彼らが風呂に入ったのは知っている。だが出たのも同じくらいなのがどうも腑に落ちない。女性は何かとすることが多い。ナミとロビンも化粧を落として温泉に入り、ヘアパックやボディマッサージ、髪を乾かしたり化粧水をつけたり乳液をつけたりフェイスマッサージをしたり爪を磨いたり、おまけに体重チェックやマッサージチェアとか水分補給とか、最後にまた薄化粧を施したりととても忙しい。なのに出たのが同じ頃だ。
「そうね、随分と長風呂みたい」
ロビンが小さく頷いた。
「男の風呂って短いわよね?もちろん個人差はあるだろうけど、一体どこ洗っているわけ?温泉に長々浸かってるの?」
「さあ?男の人にも温泉好きはいっぱいいると思うけど。でも可哀相に真っ赤だったわ。もう片方はケロッとしてるのに。まるで彼だけ長時間サウナにでも入っていたみたいに」
クスッとロビンが笑う。
「サウナ?館内案内にはあるなんて書いてなかったけど?」
「ええ、そうね」
「…ねぇ、気のせいかしら。なんか色っぽくなかった?のぼせて赤い顔していたからそう見えただけ?胸元がはだけてたから?」
そんなナミの疑問にロビンは、
「男湯には誰もいなかったわ」
「誰も…?」
「ええ。さっき扉の隙間から見えたけどスリッパがひとつもなかった。今日は空いてるみたいだし」
一呼吸置いて、
「きっとゆっくりできたわね」
クスクス楽しそうに笑った。
サンジはすぐに体調が戻った。夕食の席ではナミやロビンに愛想をふりまきながら、彼女たちに酒と愛を注ぎまくっている。ただひたすら奉仕され、ナミとロビンの機嫌もいいようだ。とかく会話が弾んでいる。ついでのようにサンジはゾロに酒を注いだ。
一見機嫌は良さそうであるが、後で忘れた頃に報復があるやもしれないとゾロは考えた。だからといって何をするでもないし、ままあることなのでさほど気にはならない。気にしていたらこの男と付き合えない。
そしてサンジはゾロの予想とは反対に、何も怒っていなかった。むしろ態度そのままに彼は機嫌がいい。何故かといえば、それもゾロの意図せぬ部分に理由があった。
湯船に沈んだサンジをすくいあげ、雑ながらも水滴を拭ってから浴衣を着せ、前ははだけたままではあるがまずは場所を移動して、それからはせっせと扇ぎ、水分を飲ませてはまた扇いだりと不器用ながらも出来ることはした。ゾロが原因なのだから当然といえば当然であるが、部屋に戻れば冷たいタオルで頭を冷やし、そしてまた扇いだりと、そのときされた行為を朦朧とした頭でサンジはすべて覚えていた。
それは幼い頃、熱をだして祖父に看病された時に似ている。
ひんやりとした濡れタオル、そして自分を見守る眼と、熱を確かめる不器用な手、そんなことを看病されながら思い出して、あまりの懐かしさに少しだけ切なくなった。サンジはゾロが考えている以上にジジコンだ。
食事も済んで4人は部屋へと戻った。ナミやロビンはまた温泉にはいるつもりなのか、今度は露天風呂に行こうなどと話をしている。二組の部屋は両隣だった。同時にふたつの扉が開き、そのドアからナミがひょいと顔を覗かせてゾロに声をかけた。
意味深な含み笑いで、
「夜はお静かにね。お隣さんですものー」
ニッ、と、笑い顔が扉のむこうに消えた。
ゾロの勘は、嫌な予感だけは外れたためしがなかった。
深夜、サンジの部屋のテレビがひとりで喋っている。
広々とした牧場の風景と、そして可愛い女性のリポーターが美味しそうに牛乳を飲んだり冷たいアイスクリームに舌鼓を打っている。
「なぁ」
サンジの呼びかけに、
「絶対に行かねぇ。もう二度と誘わねぇ」
ゾロの返事は容赦なかった。
「まだ何にも言ってねぇのに。クソが…」
舌打ちするとそのままサンジは床にごろっと寝転がった。
テレビを見るのに枕でも必要だったのか、隣で胡坐をかいているゾロの膝に、当然のような顔で金色の頭を乗せた。
「おい」
「何だ?まさかこれくらいで文句いうつもりか」
「おめぇじゃあるまいし。文句じゃなくて」
ゾロはそのまま口を閉ざした。言葉にしていいものかどうか迷ったからだ。
想像以上にサンジの頭が重い。サンジの頭がというか、人間の頭部をもっと軽いものだと考えていたゾロは少しばかり驚いた。ただそのままの言い方をすると、「俺の頭が重いのは当たり前だ。ぎちぎちに詰まってる。つうか軽いと思ってやがったとか、アホかっ!スッカスカのてめぇと一緒にすんなハゲ!」程度の罵りは受けるかもしれない。
だからといって、それが面倒とかではなく、もちろんマゾというわけでもいないが、サンジとそういう言葉のやり取りは嫌いでなかったりする。それなりに楽しめるようになった。だが今それを口するのはやめようと思う。
頭の重みは心地よいものだ。
そう感じた。
ゾロは膝にある黄色い頭を、掌で包み込んだ。
頭を覆う手が暖かくて気持ちよくて、それは幼い頃、胡坐をかいた祖父の股間に無理やり入り込んで膝枕をして貰った時のような、そんな心地よさにサンジは眼を閉ざした。
ここまでジジコンだったとゾロは知る由もないが、温まった膝が、その重みが、だんだんと瞼を重くしていった。意識が遠ざかっていくのも時間の問題だろう。
現在、この部屋でテレビを見ている者はいない。
画面は夜間飛行の旅へ変わっていった。
どこまで続くともしれない闇の中を、一機のセスナがゆっくりと進んでいく。
狭い機内を紹介してから、カメラは地上を映した。
真っ黒な海に、白や黄色や青や緑、または点滅する赤い光が浮かんでいる。それは地上に移しだされた星の輝きだ。
その星々に別れを告げるように、機体はぐんぐんと上昇していった。
静寂な夜の世界。
その先にあるのは、少し端の欠けた、白く輝く月であった。
END
※リーマンパラレル第3弾。付き合って4年、ゾロサンジ共に26歳設定です。
年齢と共にラブ度が上昇中。次回は30歳となります。お読みくだされば幸い。
2006/6.18 2011/01.17部分改稿