リーマンパラレル、このシリーズもこれで13本目となりました。記念として金曜日にUPです。記念なのに↓注意書きがあります。


注意※○とはいえウソップがフ○ラされてます。要注意。苦手な方は回避推奨。サンウソサン、受け攻めはどうあれウソップは被害者です。





でもワザとじゃない





薄闇のなかで金色のものがゆらゆら揺れている。
なんだろう、目に馴染まない闇の中でじっと目を凝らしして見ると、光ってるのはどうやら髪らしいとなんとなくわかってきた。
漆黒の空気に、そこだけぽうっと光が灯っているように、さらさらさらさら金色のものが流れている。
サンジだ。
ウソップは直観的でそう感じた。何故そう考えてしまったのか自分でもわからない。金髪の知り合いはサンジだけではないし、ないどころか、色味こそ違えどカヤが金髪だ。でも同じ金髪でもカヤとサンジの色味は違うもんだなァ、とそんなことをぼうっと考えていたら、どこからか湿った水音がした。ピチャっと水を打つ音だ。
子猫がミルクを舐めているみたいだ。
また、ぴちゃ、と甲高い音に続き、今度は濁音の混じりの鈍い湿音がした。じゅる、っと、滴りを啜るような空気を含んだ音と、金色をしたもの目を奪われ、ウソップが身動きできずにいるとふっと髪が揺らいで、僅かに顔が上がった。
やっぱりサンジだった。
闇に宝石のような青い眼がキラッと光り、自分と目が合った瞬間、瞳孔がすっと細くなった。獲物を狙う猫みたいだ。
ニイッと闇に笑いを残し、また顔を伏せるや、じゅるっと湿った音がして、彼が何かを咥えているのだとわかったその時、ウソップの股間を突如として激しい快感が襲ってきた。
ぬるっと温かく、しっとりと濡れ、包み込むような心地よさ、たとえようもない快感、何故気持ち良いのか、彼が何をしているか理解してしまった。
「…お、おい…、サン…ジ?」
どうしてだと、掠れた喉を震わせ、ウソップが問うなり、じゅぶっと根元から吸われ「は…ひっ…!」おもわず声が裏返った。
サンジはすっかり硬くなったそれをそっと手で支えながら、猫のように舌先で弄んでは、そして舌全体で愛撫して、そして咥える。
「…うっ」
おもわずまた呻き声を漏らしつつ、
「…なんで……?おめぇ…そんなことしたら…大変…なことに」
云ってはみたものの、ウソップがまさに快感の大渦に巻き込まれ、既にとても大変な状態である。
その大変さたるや、頭の中で、いろいろなことがぐるぐるぐるぐる高速で回って、半端なく大変だ。

どうしよう。このまま流されてはカヤに申し訳が立たないではないだろうか。俺の大切な操がサンジに、ゾロにばれたら、どうする、怖い、殺される、ああでもこんなに気持ち良くて、どうすんだお前、どうしてくれる、うをおおおおお、気持ちいいいいいい!!

と、声にならない叫びをあげ、また喉奥までじゅるっと咥えられて、
「…………くーーーーーーーっ!死ぬっ…!殺されるっ…!」
おもわず腰が抜けそうになった。

やべぇ。

頭の中で黄色いランプがチカチカチカチカ点灯している。

マジ、やべぇ。

ウソップは焦った。点滅がだんだん早くなって、まるで全力疾走している心臓みたいだ。脳内ではずっと黄色がフラッシュ、それももうすぐ赤に変わるのだろうと、確信に近い予感がある。
震える手をそっと延ばし、目の前にある金色のものに触れた。
意外と軽いそれは、とてもサラサラした手触りで、指から零れ落ちる金の絹糸のようだった。それをぎゅっと鷲づかみで握るとまたサンジが顔を上げた。
薔薇色に上気した頬、潤んだ青い目でウソップを睨むように見て、いきり立ったものにこれ見よがしに舌を絡めてみせた。
舌先を尖らせ、または全体を丁寧に舐め、絡ませる、そして吸う。焦らして遊ぶその表情は淫らで、とても愉しそうだ。闇に浮かぶ白い肩や首、揺れる金色の髪、唾液に濡れた唇、薄赤くなめらかな舌先、そして挑みかけるようなきつく青い目、すべてが別人のように艶めかしい。

ゾロ。
ウソップは心の中で、昔からの友人であり、サンジの恋人でもある男に話しかけた。

今初めてお前の気持ちがわかった気がする。いや、勘違いかもしれんがわかる、わかるぞ。正直云えばわかりたくなんかなかったけれど、でも俺にもわかってしまった。確かに、これならば、まさかここまでとは。

でもやばい、やばいなんてもんじゃないぞ。

しゃれにならん。危険だ。危険がいっぱいだ、おい、そんな目で俺を見るな、焦らすな、わざとだなお前、お前、お前、サンジお前って奴は、やばすぎだ、ゾロ、ゾロ、ゾロゾロゾロゾロゾロ、俺様が大変だああああああああ!!

と、また心で叫んだ、その瞬間。
チカッ。
点滅が赤に変わった。カウントダウンが始まった。
するとサンジはそれの付け根を指でぎゅっと絞って、すっぽりと口に含んで、そのまま中で舌を転がし弄んだ。
「…ぐっ」
気持ち良すぎて喉が鳴る。ウソップは少し涙目になった。ひどい。あんまりだ。おもわず丸い頭を掴み上下に揺すった。
もっと深く、喉のずっと奥までとリズムをとる。
もっともっとと自ら腰を動かし、ああ、でもこんなことでいいのかと疑問を感じつつ、でも動くことが止められず、にっこり笑ったカヤの可愛い笑顔がチラッと脳裡を過ぎては遠ざかっていき、あまりも壮絶な快感に、「…うっ」海老反りになって一度は耐えたものの、所詮は時間の問題だろうとウソップは快感と絶望の狭間で揺れた。だが、

ああ、もうダメかもしれん、もうどうなってもいいくらい気持ちいい、良すぎる、サンジ、おめぇはこうやってゾロを喰っちまったんだな、すごい、俺も喰われる、いやもう喰われてもかまわねぇ、いっそ根元から、全部っーーー…!

ウソップの頭が真っ白になって、カヤが脳裏から完全に吹っ飛んで行ったその瞬間、ふっと耳元で、
「…ウソップ…てめぇ」
いきなりゾロの声がして、

「ウィ…ヒョオーーーーーーーー!!!」

喉が引き攣り声が裏返って、いきなり全身に冷水を浴びせられたかのような、悲痛な叫び声がウソップの喉から迸った。









自分の悲鳴で彼は眼を覚ました。
まだ真夜中だ。新聞配達のバイクでさえまだ通っていない、遠くから車の音が聞こえるだけの静かな夜である。
そんな中、ウソップの心臓がものすごい速さでドクンドクンと脈打っていた。シャツも寝汗で濡れてぐっしょりだ。
「……あ、…………」
身体を起こして右を見て、
「…夢?…あ…サンジは…夢か?」
確認するかのように天井見上げては、
「……つうことは、ゾロも…だよな?まさかいねぇよな?」
きょろきょろ辺りを見回してから、ウソップは安堵の長い溜息を吐いた。
そして彼は心から思うのであった。
夢で良かった、本当に良かった。怖かった、恐怖すら感じるほど気持ちよくて、怖いほどに溺れてしまいそうで、猛烈に怖くて、ホラーだ、まさに悪夢だ、でも本当に本当に夢で良かった、そう繰り返し何度も呟いた。
ふと股間に手を置いてみると、そこは不思議と何も兆していなかった。いや、いつもよりあきらかに縮んでいるように思える。
「…ふっ…」
自嘲気味な笑いがこぼれ、
「……瞬殺されちまったか。ゾロ、おめぇって奴は…」
みるみるうちに長い鼻までしなしなと萎んで垂れた。






それから2週間程してからのことだ。ウソップのもとへサンジから連絡があった。
久々に3人で会わないかと話を持ちかけられた。3人というからには、もちろん残る一人はゾロだろう。
待ち合わせは3丁目の裏通りにある、彼の行きつけの小さなレストランに決まった。恐ろしく高いわけではないけれど、とにかく旨い、知る人ぞ知る隠れ家的な店だ。しかも煙草が吸える、サンジにとってとても有難い店だ。大通りに行けばウソップのよく行く大きな画材店もある。
当日になり、学校で講師としての授業が終わった後、待ち合わせまでの時間をウソップはその画材店で過ごした。
荷物になるので買い物するつもりは最初からなくて、ただ冷やかしのように見ていただけだが、時間が過ぎるのも忘れるくらい楽しくて、見てるだけなのについ時間を忘れ、指定された店に到着したのは待ち合わせギリギリの時間だった。
狭い店内を見渡せば、そこにはゾロやサンジの姿がない。
遅れてくるのだろうと席に座り、窓から外を眺めていると大通りの方からサンジの姿が見えた。
細い路地の石畳の上を、チョコレート色のスーツを着て、そして黒いコートを風になびかせ走ってくる。
とてもコックには見えないその男は、店に入るなりまっすぐにウソップのもとへやってきた。コートを脱いで椅子に腰かけ、
「待ったか?」
さっそく煙草をくわえた。
「いや。俺も今さっききたところだ」
「そうか。おい、先に何か注文したものとかある?昼飯食いそこねて、むちゃくちゃ腹が減ってる」
「俺もだ。何にする?何も注文してねぇけどゾロは待ってなくていいのか?」
「どうせそこらへんで迷ってんだろ。遅れてくるやつが悪い」と、ズバッと切り捨て、サンジがメニューを開いた。

テーブルには赤いワインとカプレーゼが乗っている、そこへまず海鮮パスタが運ばれてきた。新鮮な魚介類がふんだんに入っているこのパスタはサンジの大のお気に入りだ。ぷりぷりした魚介した新鮮な甘み、麺の太さや硬さ、そして辛口に仕上げてあるのが実に彼の好みらしい。
「うめぇ!」
一口食べるなり、ウソップの皿にも取り分け、
「食え。うめぇぞ」
ニッと笑った。
そこへ焼きあがったピッツァが運ばれてきた。これはウソップのオーダーだ。
「おお、焼き立ての美しいこと、匂いといい、まさに芸術だ」
縁がふっくらこんがりと焼けた、熱々のそれを口に運び、
「あ…ふっ!」
頬をはふはふさせ、ごくんと飲み込んで「美味すぎるっ……!」アハハと嬉しそうに笑った。
そしてサンジの皿にものせようとしたら、熱々のチーズがとろーーーーっと蕩けでて、
「ヤベ、垂れるっ」
「おし、俺の口に放り込めっ」
「よしきたっ」
云われるがまま、それをサンジの口へと運んだその瞬間、ウソップの頭で突然フラッシュバックが起こった。

とろっと蕩けるチーズが、今にも垂れそうな熱いチーズが、トマトソースを滴らせながらサンジの中に吸い込まれていく。
熱さに眉を僅かに顰めて、青い目がそっと閉ざされた。
それをまるでスローモーションの動画でも見るように、ウソップが目で追った。そして考える。
このとろんと滴るチーズが、仕立てのよさそうなこのスーツに付いたらば、もしもその真っ白なシャツを、熱くて赤いトマトソースが汚してしまったならば。
もしもこの唇に、とろっと熱々のチーズが、もしかするとチーズでなくて――。

「……くーーーっ!熱いがめっちゃうめぇ!」
嬉しそうに弾む声に、ウソップはハッと我に返った。
なんだこれは、なんのデジャブだろうか?
今の今まで、あんな夢のことなどまるっと忘れていたのに。なんで俺の頭は思い出しちまうんだ。あれは夢だろう。今はリアルだぞ。絶対にリンクしちゃなんねぇ!!!強く自分に言い聞かせ、胸を激しく打つ鼓動を必死で抑え、ウソップは掠れ声でサンジに話しかけた。

「…も、っと、食うか…?」

瞬間、ウソップは絶望で一瞬目の前が暗くなった。
ああ、たったいま誓ったばかりなのに。
あんな夢の、たかが一時の欲望に、自分は脆くも負けてしまったのか。
いや違う。自分はただ確認したいだけなのだ。これはデジャブではない。そんなはずはない。だからもう一度だけ、そうだ、負けたわけじゃないんだ、ただの再確認…、云々と、言い訳の羅列を繰り返す、そんなウソップの心の葛藤など知る由もなく、サンジが目がパチッと見開いて、
「あ、いいのか?てめぇのなくなっちまうぞ?」
気にするなと首を左右に振って、まだ熱々のピッツァをもう一切れ手にした。するとサンジが皿を差出し、ウソップはまた首を左右に振ってそれをそっと口まで運んだ。指先が震えないよう注意して、出来るだけ普通に、さり気なく事を運ばなければ。安心させるかのようにウソップはニッと笑った。
「…俺ァ、ガキかよ」
サンジも釣られたように苦笑いして、そして無防備に開けられた唇に、目を奪われつつウソップがまたへへっと笑った。

水牛からつくられた白いモッツァレラチーズ、濃厚で赤いトマトソース、それらがとろとろに蕩けたその上には新鮮なバジル、こんがり焼けた生地と一緒にサンジの口の中へ吸い込まれていく。
ウソップの喉が鳴った。
心臓がバクバクする。
改めて見るとダイレクトにくるものがある。油断すると勃ってしまいそうな股間を戒め、もっと口を大きく開けろといいたい気持ちを抑え、すまんカヤ、確認だけ、でも何の確認かは訊かないでくれ、すまん、大丈夫だ、ただの気の迷いなんだ、そうだよなカヤ、そうだといってくれと高速で脳内会話をしているうちに、ピッツァが半分ほどサンジの口に吸い込まれ、彼の頭で夢と現実が重なるように繋がって、心臓がバクンと大きく脈打ったその時、背後で声がした。

「おい」

それがゾロだと瞬時に判断したウソップは、「オッ、ヒョォオオオーーーーーーッ!」奇声とともに突如直立不動となり、背後に立っていたゾロの顎に直撃してそのまま倒れ、ぶつけた方も頭頂部を強打して目を回しながらひっくり返った。
「……ーーーーっ!!!…いってぇ…!なんだってんだ……?」
痛む顎を押さえてゾロが呻く。
「…おい、ウソッ…プ……?」
が、彼は床で白目を剥き、話しかけるも返事はない。どうやら気を失っているようだ。
ゾロは今日の待ち合わせに遅れてしまった。なんでこうわかりにくい場所にあるんだ、心で文句云いつつどうにか店を探して、二人を見つけ近寄って声をかけたとたん、いきなり顎にすごい衝撃をくらった。強烈なアッパーだ。目の奥で白い火花が飛び散った。予想外の攻撃にダウンをくらい、気づけばウソップも床で白目を剥いていて、何が何だかさっぱり訳がわからない。
「…どうしたんだ?」
と、サンジを見れば、彼は彼で激しく咳き込んでいて、それどころではないようだ。
げほっごほっと涙目で咳をしながら、苦しそうに胸を叩き、
「……が…っ………喉…まで…ずぼって……」
熱々のピッツァがいきなり喉奥まで入ってきて、ものすごく大変であると訴えたいけれど言葉にならない。
最後に「おえっ」とえづき、ゾロが「はァ?」と不思議そうに首を傾げ、床に倒れたままのウソップの頭のてっぺんにあるたんこぶが、みるみるうちにぷくっと大きく膨らんだ。









END


2012/10.26
いやぁ、もうしわけない。